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VAR制度教材: 主審主導のレビューでは全てが可能

火曜夜に行われたKNVB beker: Excelsior - Vitesseでは後半 Loïs Opendaが先制点を決めたかに思われたが、VAR Laurens Gerretsの介入により映像を見た主審 Dennis Higlerがその直前のRiechedly BazoerのFKでボールが完全に静止していなかったと得点を取り消した。

 

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まず確認しておくべきは、ここ最近 BundesligaやPremier Leagueで実際に起きていたように、得点・penalty・レッドカードに至るリスタートでの不正はVARのチェックの対象外となっている。こうした「不正なリスタート」はフィールド上の審判が見ておくべき事であり、毎回VARのチェックで時間をかけるべき出来事では無いというのがIFABの定めたprotocolだ (実際には競技規則内のVAR protocolにはなぜか書かれておらず、未公開のVAR handbookにのみ記されている)。

 

試合中からこのビデオ判定は大きな議論を呼び、Higlerはこの試合すでに明らかなレッドカード見逃しシーンもあったことで試合後のESPNのインタビューでカメラの前に立つことを拒否して帰宅。翌日になってインタビューに答えて説明した。
「BazoerがすぐにFKを行った時、私はボールが完全に止まっていたかどうか疑問に思った。プレーを続けさせてVitesseが得点し、それから私は自分の主導でVARと連絡を取り、ボールが実際止まっていたかどうか尋ねたんだ。それからVARは私に映像を見せ、まだボールが転がっているのが明確だったため、私は得点を取り消さなければならなかった。だからこれはVARが私をスクリーンの前に呼んだのとは違う。protocolではVARがこうしたシーンでレビューを行えないと書いているが、主審は常にレビューを求めることが許されている」
https://www.espn.nl/voetbal/artikel/_/id/8163287/higler-over-afgekeurde-goal-vitesse-ik-twijfelde-en-heb-zelf-om-een-review-gevraagd

 

続いてDick van EgmondがADで説明。
「主審 Dennis HiglerはVARにボールがまだ転がっていたかどうかを自分で尋ねた。彼は疑いを持ち、不確実性よりも確実性を取った。その後Dennisはスクリーンへ向かい、正当にゴールを取り消した。この手順はprotocolに従ったもの。この手順は主審次第であり、VARからでは無いというのは変わらない。かなり多くの場合ディテールに関わるので、これは良いルールであり続ける。今回は重要なシーンだったので、HiglerがVARに状況のチェックを求めたのは良いことでもあった。だが実際にこれはそれほど多くは起きない」
「これはどのように行われるべきか、どのように行えるかの良い例だと思う。理想的な状況ではもちろん主審が自分で見ること。しかし何か見逃したと思ったなら、VARは良いachtervangになり得る。それはこの例から明らか」
https://www.voetbalprimeur.nl/nieuws/966644/bizarre-var-ingreep-leidt-tot-tevredenheid-bij-knvb-juist-hoe-het-wel-moet.html

 

protocolの記述では、まずVARは得点・PK・レッドカード・選手誤認に関わる状況を全てチェックするが、主審はその状況で自分の判定に本当の疑いを持った場合はVARにチェックを求めることができる。さらにVARは明確な誤審か重大な見逃しの際にのみ主審をスクリーンの前に呼ぶことができるが、この際にも主審は自分の判定に本当の疑いがある場合は、VARが明確な誤審と判断しない場合も自分でスクリーンの前に行って映像を見ることができる。これは競技規則における最終責任者としての主審の絶対的な権限に基づいてルール上保証されている権利である。protocolにおける最重要ルールの1つである、「主審が『判定を下さない』で、VARに判定を下させることは認められない」という記述にも、それに続いて「反則かどうか疑わしいが、プレーを続けさせた場合であっても、その反則についてはレビューすることができる」と書かれている。

 

問題はVAR制度では度々そうであるように、外から見ていてどのような手順で判定が行われているかが全く分からないことだろう。protocolには 「主審およびその他の審判員が『判定を下さない』ことは認められない。判定を下さないことで、『説得力がない、優柔不断な』レフェリングや『レビュー』が多くなること、技術的不具合があった場合の重大な問題につながることになる」という重要な記述があるが、今回のケースは一見してまさにそれである。本人の説明が無ければ、状況としてはHiglerはボールがまだ転がっているのが見えたけれど、それにはVARが介入できないから、流して得点を認めた上で自分からVARにチェックを求めた、と解釈することもできてしまう。

 

日頃「我々はVARが呼んだ時しかスクリーンの前に行けない」とコメントしている主審が自らスクリーンの前に行くのは奇妙な感じだろう。今回は映像からボールがまだ転がっているのが明確に確認できたことで、主審からの要請でチェックを行ったVARが主審にOFRを勧めるという形式を取ることはできたが、より主観的なケースでこうした事がおきると状況は非常に複雑になる。実際にこれは「ルールの抜け道」のような運用法と言えない、ということは決して無いだろう。Van Egmondが言うように主審たちが(競技規則が前提としている)善意をもって最善を尽くせばこうした状況はほとんど起きないが、こうした手法が許されることでフィールド上の審判への心理的悪影響も起こり得る。