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Feyenoordを中心にNederlands voetbalを追いかける

カンピューンスハップへの道を再び予感させる前半戦

フェイエノールトの2011/2012シーズン前半は後に復活への大きな第一歩だったと振りかえられるだろう。昨シーズン数え切れないほどの苦杯を舐め、昨夏もクラブの前には暗雲が立ちこめていたが、この数ヶ月でそれは全て消え去り、今や将来の成功は約束されたも同然とクラブに関わる誰もが信じている。来シーズン再び欧州の舞台に戻ることはもちろん、10数年ぶりのカンピューンスハップ奪回、悲願のコールシンゲルはもはや夢ではなく、現実的な目標だ。

 

成功の要因はさまざまあるが、まずは「KGB」とあるメディアで名付けられたテクニカル・スタッフ陣が賞讃されるべきだろう。昨シーズンのどん底から上を目指していくクラブ同様に、ヴァレンシアとAZでの挫折からリベンジを目指すロナルド・クーマン、O/19で多くのタレントを育ててトップチームへ送り込んだJP、そして共にプレーしていた選手たちも多く人望ある前キャプテンのジオ。全員がフェイエノールトのかつてのキャプテンであり、フットボールをよく知っており、カリスマ性と能力を備えたクラブ史上でも最高レベルのテクニカル・スタッフ陣と言って良い。CLの経験で格上相手の戦い方を知り尽くしたクーマン、鋭い戦術眼でポジションプレーを指導するJP、選手たちの兄貴分として選手に厳しく意見を言えるジオ。昨シーズンまでのマリオ・ベーン、レオン・フレミングス、パトリック・ローデワイクスのトリオとは残念ながら比べるべくも無いだろう。

 

それはディレクターにも言えることで、クラブの象徴的存在であったドン・レオの後任となったファン・ヘールは数々のクラブで結果を残し、味方だけではなく敵も多いというまさに「職人」と呼ぶに相応しい人物。マリオ・ベーン解任騒動では責任を放棄し評価を下げたが、クラブに来て初の移籍市場となった昨夏にその能力を見事に証明してみせた。ここ数年補強では失敗を重ねていたフェイエノールトだが、移籍市場最終日に粘りに粘ってトゥエンテから契約のこり1年のフェルに5.5milの額を引き出させて売却。即座にPSVからバッカルをレンタルし、マンチェスター・シティからトゥエンテが獲得に失敗していたジョン・グイデッティのレンタルで合意を取り付けた。エクセルシオールから戻ったヨルディ・クラーシ、ミケル・ネロム、長期離脱から復帰のセク・シセ、ルーベン・スハーケンと全員主力として結果を出しており、セレクションの層は格段に厚くなっている。

 

ピッチ上で最も輝きを見せているのは中盤だ。即座にスタメンを獲得したクラーシはこの冬多くの監督が「オランダ最高のタレント」に挙げるほどの成長を見せており、その戦術眼と正確なカバーリング能力はすでにリーグトップクラス。ボールを持った時のパスはまだ改善の余地があるが、それでも試合を決める決定的なボールを何度無く通してみせている。さらにフェイエノールト加入後の3年間、まったく期待に応えてこなかったカリム・エル・アマーディがようやく本来の能力に見合うパフォーマンスを発揮。かつてロビン・ファン・ペルシが「いますぐプレミアに来ても通用する選手」としてイブラヒム・アフェライ、ルイス・スアレス、ムニール・エル・ハムダウィと共に名前を挙げた名手も、ロッテルダムでは2シーズン前のPSVとのベーカー戦で唯一その高い能力を見せただけでその高額のサラリーもあってサポーターからは非難の的だった。しかし昨シーズンのドバイへのレンタルを経て「売れ残り」の形で残留した今シーズンはクーマンの信頼を得てそのフットボールセンスを遺憾なく発揮。攻守の切り替えでキープレイヤーとなっており、ファンサイトではクラーシとグイデッティを抑えて前半戦のベストプレイヤーにも選ばれている。このスペルフェルデラー、コントローラーと共に中盤で攻撃面のアクセントを加えているのが「ベテラン」のオトマン・バッカル。PSVでルテンから不遇の扱いを受け、契約のこり1年での1年レンタルとして加入した彼もロッテルダムフットボールをプレーする喜びを取り戻している。AZ戦の先制点のようにゴール前でのスペースを巧みに突いてゴールを奪う能力は傑出しており、再びオランイェ入りを目指そうと意気込みもある。途中やや調子を落としたが、グイデッティが激しくマークされることが予想される後半戦はバッカルへの期待が大きい。

 

中盤の他にもフェイエノールトの正GKとして多くの批判を受けながらも、それをはね除けてPSV戦でスーパーセーブを連発したエルヴィン・ムルデル。シーズンスタート当初不安定だったDF陣に安定感をもたらしたケルフィン・レールダムとミケル・ネロムの従兄弟サイドバック・コンビ。特にネロムは見事にチャンスをモノにし、フェイエノールト、オランイェの両方でようやくジオの後継者が現れたと言われる可能性がある逸材の予感。ステファン・デ・フライが怪我で離脱した後、ブルーノ・マルティンス・インディがCBで安定したプレーを見せたのも今後のチームにとって大きなプラスアルファ。ユースでは左バックでブレイクしたがトップチームでは不安定を見せてきて、本人もO/19オランイェで成功したCBでのプレーを望んでいたため、今後もCBのポジションを争うことになるだろう。

 

3トップも大きく入れ替わり。まずは加入した昨シーズン1年目で期待に応えられなかったルーベン・スハーケンがデ・カイプで2年目のブレイク。特に右サイドに回った時の突破力は素晴らしいものがあり、貴重なシーンでのアシストも度々記録。さらにローダJCから移籍後、何度となくつま先の怪我に悩まされてきたセク・シセがついに全快。スピード、パワー、テクニック、フィニッシュ力を備えた大きなポテンシャルを持つ「本当のセク・シセ」をついに見せ始めている。そしてユース上がりのフロート・タレント ジェルソン・カブラルの大ブレイク。自信過剰を戒められるシーンはあるが、ピッチに入れば決定的な違いを作れるクオリティは疑いようが無く1日も早くスタメンを不動のものとしたい。さらに圧倒的なスピードを誇るギオン・フェルナンデスもサイドでぷれーできるため、ビセスワールの穴は感じられない。

 

このセレクションにプラスアルファをもたらしたのが言うまでもなくマンチェスターからレンタルでやってきたジョン・グイデッティだ。加入当初はコンディションが整わず不安もあったが、8月のヨング・オランイェとの試合での大活躍などそのクオリティに疑いはなく、コンディションが出来上がってきたフィテッセ戦からは圧倒的なパフォーマンスでゴールを量産。さらにRKC戦での同点ゴール後の身振りなど、体全体でチームを鼓舞しようとする姿はフェイエノールトファンがディルク・カイト以降求め続けてきた信念と情熱を兼ね備えたスピッツ、チームリーダーの姿そのものだった。それはロン・フラールにもステファン・デ・フライにもヨルディ・クラーシにも無いキャラクターであり、長らくクラブから失われていたメンタリティだが、それこそがフェイエノールトの闘志を象徴するこのクラブ本来のメンタリティであり、おそらくクーマンもファン・ヘールも予想外だっただろうが、結果的にフェイエノールトはクラブにとって理想的なスピッツをレンタルできたことになる。

 

シーズン前半はボールを持たれることが多いトッパーで圧倒的なパフォーマンスを見せる一方、引いて守る格下相手に苦戦する傾向があり、パフォーマンスも不安定だった。90分間終始相手を圧倒しての完勝と呼べるのはホームでのローダJC戦とアウエーでのフィテッセ戦くらいだろう。最悪だったのがユーロボルフでのフローニンゲン戦6-0の大敗だが、相手が常軌を逸した効率の良さを見せたために他の試合と同様に判断すべきではない。むしろミスからカウンターで失点し、ボールを持ってもプレーテンポが上げられずに引いて守る相手を全く崩せなかったADO戦0-3が最も問題点が露わになった例だろう。この試合では特に前半失点を重ねたことで、チーム内から自信が無くなり、ポゼッションを取った後半も相手ゴール前で思い切ったプレーをすることはできなかった。ミスと不運の違いはあるが、相手に先制を許してからパフォーマンスが落ちるというメンタル面の弱さはホームでのNEC戦0-1、GAE相手に敗退したベーカー戦2-1も全く同様。若いセレクションでメンタルの弱さは仕方の無い面はあるが、ユースから上がってきたばかりの選手が多かった昨シーズンと比べて、多くの選手がトップレベルで1年の経験があるのだから、これだけ同じ過ちを繰り返したのは非難されても致し方ない。幸いにもフィテッセ戦以降は安定感が増しつつあり、厳しい試合で勝ち点を積み重ねていることから、それがチーム内での自信を高めていくことになるはずだ。その自信がポジションプレーの向上に繋がると期待している。

 

いまやオランダ最高の育成機関を抱えていると誰もが認めるフェイエノールト。JP、ヴィム・ヤンセン、コル・アドリアーンセ、ロイ・マカーイら多くの元名選手がクラブの後輩たちを鍛え上げて大きな成果を挙げている。ルク・カスタイニョス、ステファン・デ・フライ、ヨルディ・クラーシらを抱えた2シーズン前のO/19は圧倒的な成績でカンピューンとなったが、昨シーズンのO/17はそれを遙かに凌ぐタレント集団だった。カンピューンはもちろん、O/17オランイェでもスタメンの半数を占めて圧倒的なパフォーマンスで欧州を初制覇し、国内外に衝撃を与えた。功罪共にあり、ナタン・アケ、カイル・エベシリオ、カリム・レキクというスーパータレント3人をイングランドに奪われたが、それでもアナス・アシャバール(17)を筆頭にエルヴィス・マヌ(18)、マテュー・ステーンフォールデン(18)、マッツ・ファン・ハイヘフォールト(18)、テレンセ・コンゴロ(17)、トニー・トリンダーデ・デ・フィリェナ(16)と多くのタレントが控えており、彼らはこの冬のトレーニングキャンプに帯同してチャンスを得ることが決まっている。すでにアシャバールはトップチームでデビューしゴールも挙げているなど、この育成組織がある限りクラブの将来は明るいと言って間違いない。

 

巨額の負債を背負っていた財政もこの1年で劇的に好転。ピム・ブロクラント氏率いるVrienden van Feyenoordの活動でクラブに多くの支援が集まり、約40milにまで昇った負債額も大きく削減。昨夏の移籍市場での収支でついに全額返済が見えてきたことでKNVBからカテゴリー2復帰の確約を得るに至った。これにより来夏からは再び移籍金を払って選手を買うことが可能になる。もちろん財政はいまだに厳しいため、より良好な状態になるまでフリー移籍とレンタルが中心になるが、ピッチ内外でクラブが良い方向へ向かっているのは事実であり、この冬もルート・フォルメルが「フェイエノールトでプレーしたい」と逆指名。再び選手から求められるトップクラブとしてあるべき姿を取り戻しているのが良いサインだ。

 

いまや再びオランダのトップクラブと戻りつつあるフェイエノールト。一部では今シーズンのカンピューンの可能性も囁かれているが、奇蹟的な快進撃を続けた上で上位が昨シーズンのようなgdgd状態にならなければ無理だろう。現実的には後半戦は5位をキープしつつ、一つでも上を狙っていきたい。そこから来シーズンのカンピューンスハップ奪回へ向けてチームをさらに成長していくべきだ。グイデッティのレンタル延長は現時点ではあまり期待できない。アシャバールがどの程度出場機会を得られるか。フォルメルの獲得は決まったが、懸案の右バックにダリル・ヤンマートは得られるか。エル・アマーディの契約延長はされるのか。バッカルしかいないトップ下の代わり誰か。まだまだピッチ内外で課題は多い。だが繰り返して言うが、フェイエノールトが再びカンピューンとなり、ファンがコールシンゲルを埋め尽くすその時はもうすぐそこまで来ているのだ。