Mijn Feyenoord

Feyenoordを中心にNederlands voetbalを追いかける

全てのピースが嵌った前半戦

2011/2012シーズンの2位から、今シーズンは苦しい戦いが予想されていたフェイエノールトだが、前半戦を終えてコップローパーと3pts差と再び好成績を残せる位置に付けている。ティートルレースではまだ"影の候補"ではあるが、すでに安定して上位争いに加われるベースを築いていると言って間違いない。ピッチ外でも財政状況がついに黒字に転換、タレントたちも契約延長にサインし、本当のデ・トップクラブへの道を歩んでいる。この前半戦を振りかえれば、キーワードは「成長」だ。

 

まずは夏の移籍市場でのマルティン・ファン・ヘールの仕事を讃えるべきだろう。フラール、エル・アマーディ、バッカル、グイデッティという文字通りの軸が抜けたチームだったが、すでにフリー移籍で獲得が決まっていたヤンマートにインマルスに加えて、旧知の仲であるマタイセンをマラガの財政難により好条件で獲得。さらに懸案事項だった9番にギリギリでペッレのレンタルに成功。バカンス先のスペインでこのイタリア人がクーマンの息子とたまたま出会ったことから話が進むという幸運にも恵まれたが、今回も敏腕テクニカル・ディレクターは厳しい条件の中で最大限の仕事をしてくれた。

 

その他にもホーセンス、シン、エラブデラウィを迎え、欧州戦を戦うための厚いセレクションを用意したはずだったが、ペッレ加入前の『9番不在状態』が響き、それでも十分すぎるほどのチャンスは作ったもののCL第3予選に続きEL-POでも無念の敗退となかったことが残念だった。ディナモキエフはCLのグループステージで3位、スパルタ・プラハはELのグループステージで2位といずれも冬越えに成功していることから、フェイエノールトも本戦に届いていれば・・・と思わずにいられない。

 

エールディヴィジが開幕してからも当初はギオン・フェルナンデスが9番を務めていたが、昨シーズン同様にポストプレーをこなせないカウンタースピッツは明らかにチームの足枷に。さらにインマルスもゴール前での決定機を尽く逃し、8月の3連勝は数字ほど楽な戦いではなかった。しかし9月から加入したペッレが直後のフィテッセ戦から早速スタメン出場。決定力が疑問視されつつも、ポストプレイヤーとしての高い能力への期待に十分に応えるプレーを見せてチームはこの試合でフィテッセを圧倒するフットボールを披露。結果的にロスタイムに決められたボニーのゴールに泣いたが、今後への大きな手応えをつかんだ一戦だった。

 

その後アイントホーフェンでのトッパーに完敗を喫しはしたが、第7節のNEC戦ではペッレが2ゴール、インマルスハットトリックと爆発。この2タワーがお互いに『良い相棒』を見出したことで、フェイエノールトの攻撃面は格段に向上。特にグラツィアーノ・ペッレはデ・クラシケルでのヴェレルトゴールを初め、得たチャンスに尽くネットを揺らすゴールマシーンへ。8月にはグイデッティの名を歌っていたレヒューンも、もうその名を惜しむ必要は無くなり、デ・カイプに新たなカルトヒーローが誕生した。ユニークなキャラクターを備えていた若きスウェーデン人と比較するのは適切とは言えないが、独特の風貌を持つこのイタリア人も十分ユニークな存在であり、『ベテラン枠』として毎試合ピッチ上でチームメイトに熱心に話しかける姿は彼の勝利への情熱を物語っているものだ。そして意外に穏やかな性格だったことが判明したレクス・インマルスも、走力のある10番としてチームに欠かすことのできないピースになっている。ペッレと彼が正しい時に正しいポジションを取り、力強いポストプレーでボールを収めてくれることで、チームはデ・カイプで引いて守る相手に対してもカウンターを怖れずに楽観的な攻撃を仕掛けられるようになった。

 

結果、トッパーでのトップパフォーマンスと格下相手の弱々しさという不安定さを見せた昨シーズンに比べ、今シーズンのフェイエノールトはポゼッションを主体にした安定したフットボールができるチームへ成長。前半戦アウエーの多かったトッパーでは結果を残せなかったが、格下相手の不安定さはほぼ無くなって勝ち点としては昨シーズンを上回っている。小さなスペースでも相手を崩せるようになり、2位になった昨シーズンのチームよりもフットボール面の向上は明らかだ。この点はロナルド・クーマン、ジャン・パウル・ファン・ハステル、ジョヴァンニ・ファン・ブロンクホルストの功績だろう。守備面でもセットプレーの失点が多すぎるものの、流れの中から崩されての失点は非常に少なく、CBに怪我人が続いた中で安定した戦いを続けられたのはこの要因も大きい。

 

新加入組ではヨリス・マタイセンの評価も忘れるわけにはいかない。フラールを失った後の若すぎるセレクションにおける『ベテラン枠』と左利きCBとして迎えられ、当初は第2節ヘーレンフェーン戦で対応に遅れての一発退場などクオリティが疑問視されたが、次第に周囲と連携が取れるようになりパフォーマンスを上げ、特にデ・フライが長期離脱した9月10月の彼の存在は大きかった。30代に異例の3年契約や、「高いサラリーにセレクション内で不満が出ている」との報道がされるなど落ち着かない日々もあったが、自らのプレーで雑音を封じ込めたのは見事だった。そしてもう一人はダリル・ヤンマートフェイエノールト待望の超攻撃的サイドバックは、加入直後からレールダムのポジションを奪って右サイドを疾走。迫力あるオーバーラップからのフィニッシュは今シーズンのフェイエノールトの象徴の一つであり、スハーケンとの右サイドはエールディヴィジ随一だろう。守備面でのポジショニングと1対1の対応が良くなれば、今後数年オランイェのスタメンをつかむことも可能なはず。

 

フェイエノールトのユースの優秀さはもはや改めて語るまでもなく、安定感を得たチームの中でタレントたちも落ち着いて成長してきている。デ・フライとマタイセンが同時に離脱していた時期にチームの危機を救ったのがテレンセ・コンゴロ。ユースで長年レキクの相棒を務めてきた左利きの18歳は、トップチームでもマルティンス・インディの右で全く浮き足立つことなく高いパフォーマンスを披露。ただ、その後ヨングで膝の靱帯を痛めて離脱となってしまった。中盤ではレールダムの契約問題で得たチャンスをトニー・フィリェナが見事につかんだ。18歳とは思えない落ち着きと勇敢なプレーで中盤に欠けていたピースを埋め、クラーシ、フィリェナ、インマルスの3センターは昨シーズンのクラーシ、エル・アマーディ、バッカルに決して見劣りしないものになってきている。貴重な左利きMFであることから左サイドとの連携もスムーズになり、その恩恵を最も受けているのがもう一人のタレント ジャン・パウル・ボエチウスだ。デ・カイプでのデ・クラシケルで衝撃的なデビューを果たした18歳のウィンガーは、その後もスピードある突破という武器を活かし、左利きというアドバンテージもあってフェルフークより優先されている。欲を言えばここにもう一人の18歳、アナス・アチャバールの成長ぶりを書きたかったが、彼にとっては期待はずれな前半戦になってしまった。プレシーズンには第1スピッツの期待さえかけられ、途中出場のスパルタ・プラハ戦では代名詞のヒールキックで欧州戦初ゴールを挙げたまでは良かったが、その後はペッレの加入で全くチャンスを得られないばかりか、トレーニングでもクーマンを納得させられずにベンチ外になる試合さえあった。契約延長で揉めているという憶測報道も流れたが、アチャバール自身クーマンの批判を理解しており、ウィンターストップに新契約にサインして心機一転して後半戦は臨んで欲しい。ペッレがプレーできない時は彼が代わりを務める他無いのだから・・・。

 

もう一人忘れてはならないのが、第1GK ムルデルの離脱時期を支えたコスタス・ランプルー。176cmという『低身長』を散々揶揄されたものの、彼のセーブで得た勝ち点も多く、貴重な活躍をしてくれた。ただそれ以上にエルヴィン・ムルデルのパフォーマンスは高く、PK戦へもつれ込んだヘーレンフェーンとのベーカー戦では10人中3人をストップしてベスト8の立役者に。今シーズンも彼の第1GKの座が脅かされることはない。

 

もはやタレント枠を超え、成熟振りさえ見せてきているのがマルティンス・インディ、クラーシ、デ・フライだ。ブルーノ・マルティンス・インディはすでにDFラインに欠かせない存在。デ・フライ、マタイセンが離脱した数週間もパーフェクトなDFである彼がいたおかげで乗り切ることができた。いまはデ・フライとマタイセンが揃って左バックにポジションを移しているが、近いうちに再びCBでプレーする日も来るだろう。ヨルディ・クラーシはデ・フライの離脱中にキャプテンマークを巻き、大きなプレッシャーに苦しんでいる印象も見受けられたが次第に力強さを取り戻していった。フィリェナが隣に立ってからは機を見てゴール前に入ってフィニッシュを狙うシーンも目に見えて増えており、まだまだ成長が見込める。前半戦最も長く怪我に苦しんだステファン・デ・フライも、ウィンターストップ前に遂に完全復活。鋭い前進守備と力強い組み立てでディフェンスの主導権を取り、ピッチ上の選手で最高のプレーを見せており、後半戦は『本物のフェイエノールトのキャプテン』としてさらにキャプテンシーを発揮することが要求されるだろう。

 

欧州枠という成長の場を逃したことを考えれば、フェイエノールトから次々とオランイェにデビューしていったことは大きな意味のある出来事だった。特にマルティンス・インディはこの半年で衝撃的なプレーを見せ、あっという間にセレクションに欠かせない存在に。デ・フライ、クラーシヤンマートもそれぞれにキャップを刻み、30過ぎでのデビューとなったスハーケンはゴールというおまけも付いた。彼らが揃ってオランイェに招集された事こそ、今のフェイエノールトを物語るトピックと言える。

 

こうしてほぼ全てのピースが上手く嵌ってチームとしても個人としても大きな成長を見せた前半戦。目標は依然トップ5で欧州枠を得る事だが、昨シーズン同様にそれ以上も可能だとチームは信じつつあるだろう。それだけに1月のウィンターストップ明け直後のトッパー3連戦の持つ意味は途轍もなく大きい。アレナでのデ・クラシケル、デ・カイプでのトゥエンテ戦、そしてフィリップス・スタディオンでのPSVとのベーカートッパー。ここを好成績で超えられれば(最低でもリーグ戦2試合で4pts)、もはやフェイエノールトはティートル・レースにおける『影の候補』から、『本命』として太陽の下に引き出されるだろう。その時には間違いなくクラブ全体がコールシンゲルを信じて後半戦を戦うことができるはずだ。

 

最後に長期的に見ても財政の好転とタレントたちの契約延長、クーマンも早々にもう1年指揮を取ることで新契約にサインし、クラブは明るいムードに包まれている。そろそろ移籍市場で噂の流れ始めたデ・フライがウィンターストップにサインすればさらに大きな喜びに満たされるだろう。スピッツが2シーズン続けてのレンタルというのが悩みの種だが、ファン・ヘールはフィオレンティーナとAZとの移籍手続きがまだ揉めていることから、3者協議で上手い解決策を見つけられないか探る意向。もちろんペッレに新たなクラブからオファーが舞い込めば話は全く変わるのだが、9番というポジションの重要性が改めて認識されたこの2シーズン、アチャバールが成長するまでをどう繋ぐかがクラブとして大きな課題だ。