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FOOTxBRAINで国際審判員がVARプロトコルを否定

Jリーグの審判、審判関係者がVAR制度を理解していない前回の問題から8ヵ月が経ったが、土曜夜に放送されたTV番組 FOOTxBRAINは出演した原博実とVTR中で電話インタビューに応えていたた国際審判員 佐藤隆治が公然とVARプロトコルを否定するという再び驚愕させる内容だった。

 

Jリーグ第1節の湘南ベルマーレ - 浦和レッズでVARが介入してpenaltyが与えられたhandsbalシーンが扱われ、その試合の主審 佐藤隆治が「意図的にハンドしたかどうか微妙なところで判定が変わる。 ビデオレフェリーがいる状態だから後から見直してもいいのでは」とフィールド上でその状況を見ていたが敢えて吹かなかったと認めた。そのコメントを受けてJリーグ役員の原博実も「VARがいなかったら吹いていたと思う。でもVARがいるんだから敢えて吹かないのが良いと思う」と肯定するコメントをした。

 

IFABはVARプロトコルで「フィールド上の審判員は常に判定しなければならない」と明確に書いており、上記の2人のコメントのようなやり方は全く認められていない。リーグの役員と国際審判員がメディア上でIFABルールを否定し、『我々はそれを守らないし、それで良い』という趣旨の発言をするのは前代未聞だ。

 

先ず守られるべき大原則
KNVBがビデオ審判制度のテストをIFABに要求した際、ビデオ審判の存在がフットボールの流れと感情に過度の影響を与えないように、そして最終判定者としての主審の権限を犯さないように様々な細かいルールが考えられた。ビデオ審判は"ビデオ・アシスタント・レフェリー"と名付けられ、「主審の判定が明確な誤審だった場合か、重大な見逃しがあった場合にのみ介入できる」ということが大原則として定められた。フィールド上の審判員が見ていたなら、VARは主審の判定に対してのリアクションだけを行えるため、「主審はあらゆる状況で先ず判定を下す」というのがこの制度の絶対的前提であり、「フィールド上の審判員はプレー中はVARの存在を忘れて判定を行い、プレーが切れたらVARがチェック/介入できるようにVARの存在を思い出さなければならない」と度々言われるのも当然このためである。

 

つまり今回の場合は主審が状況を見ており、見た上で「penaltyを与えないという判定」をしているため、仮に微妙な状況だったとしたらVARは介入できなかったというのが正しいルールの運用となる。VARが存在するかどうかがグレーゾーンにおける主審の自由裁量以上に試合結果に影響を与えることとなるため、2人がコメントしたようなやり方がVAR制度の趣旨に反しているのは言うまでも無い。さらにIFABはプロトコルの中で「説得力の無いレフェリングが増えること」、「レビュー頻度が高くなること」、「技術的トラブルがあった際に重大な問題になること」を、そうしたやり方が認められない理由として記しているが、「見た上で『グレーな可能性があるから判定せずにVARに任せる』」という考え方自体がそもそもあり得ない大きな間違いである。

 

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VARがグレーゾーンでの主審の判定に介入することは認められておらず(将来的に認めた方が良いというコメントがDenny Makkelieなどによってされたことはあるが、現時点でそれに反するやり方をするのが肯定されたことは無い)、VARはグレーゾーンでの主審の自由裁量の権限を守らなければならないが、主審が見た上で判定しないなら、VARがいることで主審が自分でその権限を放棄する本末転倒な事態だ。「VARは主審に2回目のチャンスを与えるための存在では無い」とReinold Wiedemeijerは何度も説明している。

 

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