Mijn Feyenoord

Feyenoordを中心にNederlands voetbalを追いかける

多額の負債と低調なフットボールの向こうに

3.600万ユーロ以上に膨れ上がった負債を抱え、ピッチ上でも今季エールディヴィジで8節を終えてわずか8pts。ELもPOで敗れ、KNVB-bekerも初戦で苦杯を舐めなるど結果、内容共に低迷しているフェイエノールト。現在クラブが抱える問題面と見通しをまとめてみる。

財政問題

長年の無理な経営と近年の財政危機、そして成績不振で積もり積もった負債は4.000万ユーロ近くなり、KNVBによって「財政破綻の怖れあり」のカテゴリー1にランクされて1年以上が過ぎた。契約が切れた選手との新契約を結ぶことは困難になっており、補強(移籍金)に使えるお金もまったくない。エリック・フッデGMは昨年大幅な経費削減を行い、2010/2011シーズンで収支をイーブンにして2011/2012で黒字へ転換する計画を立てていたが、二つのトーナメントの敗退の影響は大きいだろう。前向きなニュースとしてはこれまで別会社だったフェイエノールトロッテルダム NVとデ・カイプを管理するフェイエノールト・スタディオン、オランダ最大のアマチュアクラブであるスポルトクラブ・フェイエノールトとの年内の一体化が合意。これによって大幅な経費削減が見込まれている。さらに先日には株式の49%までを投資会社に売却すると発表。最低1.500万ユーロとも2.000万ユーロとも言われているが、フロントはクラブの主体性を残した形で現金を得ようと必死の努力を続けている。

セレクションの低年齢化

昨季までチームを支えていたジオ、ロン・マカーイが引退、デニー・ランツァートとは新契約を結ぶのを断念、ケヴィン・ホフラントもプレシーズンにオファーを受けて放出した。これでフェイエノールトのセレクションは42歳のロブ・ファン・ダイクと34歳のヨン・ダール・トマソン、31歳のティム・デ・クレル、そして28歳のルーベン・スハーケン、26歳のアンドレバイーア、25歳のロン・フラールとカリム・エル・アマーディとセク・シセ、24歳のアディル・アウアサル、23歳のルイジ・ブラインス、22歳のマイケル・ルンブ以外は全員がヨング以下の若いセレクションになっている。さらにトマソンの長期離脱、シセの長引く足の痛み、エル・アマーディのスタメン落ちなどでスタメンは常時半数が20歳以下というほぼAユニオール並の戦力で戦っている。

スピッツの不在

昨シーズン、新監督に迎えたマリオ・ベーンのもとで復活を目指したフェイエノールト。しかし3位に15pts差を付けられた最大の原因は決定力不足で勝ち点を落としたことにあった。スタメン落ちしながらも大事な場面でゴールを決めてくれたマカーイの引退と、負傷がちなトマソンに代わるスピッツを何とか獲たかったフェイエノールトだが、移籍金を出せるはずもなく、ドン・レオが手を尽くしてディナモ・モスクワからレンタルしたフェドル・スモロフは本来トップ下の選手でありスピッツとしては代役を果たせなかった。結局大事に育てたい18歳のルク・カスタイニョスをここ数試合はスタメン起用しており、チャンスには顔を出しているもののまだ1得点と現状では過大な期待はできない。WKで負傷したトマソンは最悪ウィンターストップまで復帰がずれ込む可能性があり、シセも昨シーズン後半からずっと痛めていたつま先の痛みが取れず、結局今週に再手術。復帰は早くて11月後半と見られており、今年中はカスタイニョスを起用し続けるしかないのが現状だ。

フットボールの消滅

今季に向けて「昨シーズンでベースはできた。今シーズンはそれに得点力を積み上げていく」と目標を語ったマリオ・ベーンだが、ここまでは得点力どころか昨シーズンに作ったベースとは何だったのかというほどフットボールができないでいる。ジオを失ったDFラインのパス回しは遅く(特に左サイドのデ・クレルとバイーアの二人は酷すぎる)、フェルは正しいポジションを取れず、ブラインスはチーム全体のテンポを下げ、スハーケンはボールを持った時しかアクションが起こせない。特にボールを持った時の攻撃はトマソンやデ・グズマンという中心になれる存在がいないせいで全員が他人任せか、独断での突破を繰り返すしかないという迷走状態だ。

ボールを持たない時の守備面ではフェルの不調が大きいだろう。AAヘント戦とローダJC戦の二つのトーナメントゲームでPKを失敗して以来、ミスをする場面が多すぎる。フラールの負傷により副キャプテンに任命されたフェルがキャプテンマークを巻いているが、マリオ・ベーンの選択は彼にはどうやら早すぎたようだ。左バックのデ・クレルのスピード不足も大きい。昨季のジオも度々苦戦するシーンを見せたが、デ・クレルはそれ以上に失点に絡んでおり、ボールを持った時のフットボール能力もジオには大きく及ばないことからスピードのあるマルティンス・インディの起用を考えても良いかもしれない。

マリオ・ベーンの采配

大きな期待を受けて就任したマリオ・ベーン。昨シーズン、ファンに圧倒的な支持を受けていた若き優秀な監督だが、さすがに今季は批判も多い。特に最近の試合で第7節NEC戦、後半NECに完全に圧倒されて3失点した試合後に「後半も良くなかったが、まだ前半よりは良かった」とコメントしたことや、相手のより多くのチャンスを作られたデ・フラーフスハップ戦で「我々はかなりのチャンスを作った」とコメントしたことは、「彼はいつでもポジティブだが、いくらなんでもポジティブすぎる」とファンの反感を買った。さらにデ・フラーフスハップ戦70分に良い動きをしていたカスタイニョスを下げてスピッツとしてもはや期待されていないスモロフを投入、予想通りそこから攻撃できなくなった交代策にも批判が多い。

「コンディションが整っておらずトレーニングで意欲に欠ける」との理由でエールディヴィジでもトップクラスのクオリティを持つエル・アマーディをベンチに置いていることについては賛否両論だ。この件に対してはトレーニング時での意見の違いがあった報道以来具体的な情報がなく、実際マリオ・ベーンがなぜここまで頑なにエル・アマーディを起用しないのか誰にも分かっていない。ただエル・アマーディがフェイエノールトでの過去2シーズンでそのクオリティを完全に示した試合は限られており、代役のモコチョがデビュー戦以来フェイエノールトの中で最高のプレーを見せているために大きな問題にはなっていない。(一部では今年夏に頓挫したエル・アマーディとPSVのクーフェルマンスとのトレードを冬に再挑戦する布石かという推測も)

ただそれでもフェイエノールダーであるマリオ・ベーンへの期待は大きく、NECでも不調の前半戦から後半素晴らしい巻き返しを見せ、翌シーズンのUEFA杯での奇跡的活躍へと繋げていった実績から、「フェイエノールトでもきっとできるはず」という声は多い。ただ信頼というよりも期待、さらに希望というニュアンスに近づきつつはあるが。

監督交代の可能性?

現状ではクラブには違約金を払う能力も無い為、可能性としてはマリオ・ベーンが自ら辞任するしかないが、監督経験でまだその決断をしたことがないマリオがどういう状況まで耐えられるかは未知数だ。「3連敗後も選手たちが私とやりたくないと言い出すまでは辞めない」と語っており、性格上まだまだ残り試合での挽回に自信を持っているだろうが、今後の重い日程で連敗が続くとフェイエノールトへの愛ゆえに自ら退く決断を下すかもしれない。

ただクラブには他の監督の代案があるかどうかはわからず、優秀な監督を連れてくるお金ももちろん無いため、一時的なショック療法的な影響しか出ないだろう。そうなるとまたアシスタントのレオン・フレミングスがシーズン終了まで指揮を執る可能性が高い。

どう改善できる?

8節を終えて8ptsで13位。入れ替え戦圏内の16位とはわずか2pts差。ここから来季のELを目指すにはかなりの快進撃が必要であり、ファンももはやそこまでは期待していない。マリオ・ベーンは「あくまでリンカーライチェ、そして8位以内を目指す」と言っているが、現状ではまず残留を確信できる位置まで上がることが先決であり、それが若いチームに落ち着きを与えるはず。このままでは昨季のスパルタの二の舞になりかねない。

若く不安定で、現状では明らかに力不足なセレクションではあるが、アヤックス戦最後の20分間のようにいくつかの試合で短時間ながら見せるポテンシャルは今後の可能性を感じさせるものがある。何よりも低迷から来るプレッシャーを乗り越えることだ。マリオ・ベーンはまだモチベーショターとしての手腕を見せれておらず、その点が大きな期待と不安要素だろう。

CBのフラールスピッツトマソンが揃い、中盤に安定感が戻れば残留はもちろんリンカーライチェの目標も現実味を帯びてくるはず。ただフラールはともかくトマソンは今年中の復帰は期待できず、スピッツはカスタイニョスにわずかな期待をかけるしかない。中盤の安定感はフェルが自信を取り戻し、先の期待できないブラインスを外してトップ下としては悪くないプレーを見せているスモロフか、モチベーションの戻ったエル・アマーディが入れば大きく向上するはずだ。あくまで「たられば」の話だが。

まるで機能していない両ウィンガーを外して4-4-2にすることでよりフットボールができるはずという声は昨シーズンから多い。モコチョ、フェル、ワィナルドゥムかレールダム、スモロフかエル・アマーディがより近い位置でプレーすればチームとして今よりも遙かに機能するだろう。

いずれにせよファン・ハネヘムの言うとおりにファイティングスピリットを見せて、ハンドブレーキをかけることなく常に全力でプレーしなければ今後に期待はできない。2012年に契約の切れるフラールバイーア、フェル、ワィナルドゥムの4人には契約延長の意志がなければオファーが来しだい移籍させる可能性も高く、すでに今季限りが濃厚な発言をしているフラールが冬にいなくなる可能性も無くはないだろう。