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ビデオ審判実現を目指して、KNVBの挑戦

現代フットボールにおいて判定の公平性、透明性は度々大きな問題となる。全ての試合でフェアな判定を行うため、KNVBは2013年夏に”Arbitrage 2.0”(アルビトラージェは判定の意味)を立ち上げ、フットボールの新たな判定システムを築こうと、判定のトレーニング、進歩、改善を目指しており、その最も重要な課題が、KNVBが長年にわたって指示してきたテクノロジー・ツールのサポートをプロ・フットボールに導入することだ。

 

2013-2014シーズンから始まったArbitrage 2.0の大きな柱は3つ。『ゴールライン・テクノロジー』、『審判6人制』、そして『ビデオ・アシスタント』であり、KNVBはまず2年間を試行期間として50万ユーロを投資し、将来的にこの3つのプロ・フットボールでの全試合での導入実現を目指して動いてきた。

 

審判6人制』はすでに欧州戦で実施されていたため、オランダでもヨハン・クライフ・スハール、KNVBベーカーの準決勝と決勝、そしてPOで問題無く運用されている。ゴールライン・テクノロジーホークアイを2年間試用。アムステルダム・アレナでのヨハン・クライフ・スハールに始まり、リーグ戦の途中で別会場を経てデ・カイプに移され、ベーカー・フィナーレに至るまでエールディヴィジの毎節1試合と二つのタイトル・マッチで使用された結果、2015年3月8日のデ・カイプでレクス・インマルスのシュートが初めてゴールライン・テクノロジーによってゴール認定され、改めて有効性が認められ、同様の1シーズン3会場での試用期間延長が決まっている。

 

そしてビデオ・アシスタントはオランダが世界に先駆けてテストし、挑んでいる分野だろう。ピッチ上全面でのファール、カード、オフサイド、PKなどあらゆる事象に対し、映像を使用してアシスタント審判が主審にリアルタイムで助言を行うというシステムは、実際の試合現場でスタディオン外の車両で審判(その週末試合が無い審判と引退した元審判がテスト役を務めており、誰が行うかは秘密であり、実際に試合を裁く審判団との接触も禁止)がリアルタイム映像を瞬時に判断するテストを繰り返し、すでに実用可能なレベルに達しているという。KNVBは2015-2016シーズンのベーカー戦とリザーブ・リーグで実際のビデオ・アシスタント導入テストを行えるのを期待していたが、IFABはKNVBの導入提案に対して今年2月に「まだ調査段階」と議論対象とするのを最低12ヶ月の先送りを決めたことで、未だ実現の道は見えていない(ちなみに審判6人制よりもビデオ審判の方が人的、物的コストがかからないため、KNVBは後者をより強く望んでいる)。

 

オランダでの審判の立場

オランダ・フットボールは2012年12月にアマチュアのユースでの試合で線審を務めていたリヒァルト・ニューウェンハイゼンが、判定に不満を持った相手チームの少年たちに暴行を受けた結果、死亡するという悲劇的事件を経験した。オランダのアマチュアフットボールでは、これに近い審判へのリスペクトを欠いた事件が度々起きており、ニューウェンハイゼンの悲劇は大きな社会問題としてKNVBが”Zonder respect geen voetbal”(リスペクトがなければフットボールでは無い)のスローガンでアクションを起こす契機となった。

 

プロ・フットボールの現場でも、模範的立場としてリスペクトがより求められ、2013年からは「判定に対する抗議は即イエローカード」が明文化され、実施されたが、2年半が経った今もそれが徹底されているかは微妙だ。

 

その一方でオランダには「審判もミスをするもの」という認識もごく一般的に持たれている。その大きな理由は主審が試合後、カメラの前に立ってインタビューに応えることだろう。疑問の判定に対してはほぼ例外なく質問が行われ、映像を見返した審判が時に過ちを認め、時に自分の判断を弁護する。より重要なのはその判断が正しいかどうかよりも、試合中に審判がどのように考え、審判団としてどのような経緯で判定を出したかがしっかりと説明されることだろう(実際に判定不可能な状況だった場合には率直に認め、ビデオ・ツールの助力を求める審判がほとんどである)。試合中笛が吹かれなかった悪質なファールに対しても、審判が試合中に見た上での判断だったかどうかを証言することで、規律委員会へ至る透明性も確保される。

 

試合後のTV解説でも選手と同様に審判のポジショニングや視線の向きから、判定の疑問については解説が行われ、誤審が起きたとことに理由があるのならばそれを明らかにしようとする姿勢がオランダにはあるが、欧州強国の狭間で必死で工夫を重ねてフットボールのレベルを上げてきたオランダという国の、これも特徴の一つと言えるかもしれない。