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なぜクーマンはAZで失敗したのか

今季からファン・ハールの後を受けてAZの監督に就任したロナルト・クーマンですが、16節を終えて8勝1分け7敗の7位という成績で解任されました。

エールディヴィジを知らない人はバレンシアでのイメージが強いんでしょうが、逆にオランでは「そんなこともあったな」程度で、やはりアヤックスPSVで結果を出していたイメージが強かったように思います(クーマンは今のところ「アヤックスを最後に優勝させた監督」です)。主力流出の噂が多かった夏の移籍市場でも結果的にデ・ゼーウが抜けただけで、ウェルンブローム、ラスムス・エルムを補強とまずまずの成果。シーズン前の予想では「AZの連覇の可能性もあり得る」と専門家の間でも思われていました。

しかし蓋を開けてみれば昨シーズンの圧倒的な勝負良さはどこへやら。気迫、集中力を欠いているシーンが多く、昨シーズンと同じメンバーで守っているにも関わらず、あの堅守は影も形もなくつまらない失点を繰り返しました。

少しだけAZの歴史を振り返ってみると、アドリアーンセ時代から力を付けて「オランダ一美しいフットボール」を見せるようになったチームがファン・ハールのもとでさらに規律ある強いチームに成長。ファン・ハール2年目の2006-2007シーズンには得失点差でPSVアヤックスを抑え最終節を首位で迎えるも、エクセルシオールにまさかの敗戦で悪夢の3位終戦。リベンジを誓った2007-2008シーズンも一新したFW陣が決定力を欠いてチーム全体のリズムも崩れ、最後まで精彩を欠いて11位。さらにリベンジを誓った2008-2009シーズン、開幕から2連敗するも、第3節PSV戦で素晴らしい集中力を見せて1-0の勝利。そこから堅守速攻のスタイルに変化してGK ロメロがエールディヴィジ連続無失点記録にあと一歩まで近づくなど抜群の安定感で勝ち点を伸ばして念願の優勝を果たしましたわけです。

もちろん「スモールクラブ」がカンピューンという目標を達成したことでモチベーションを失ったというのもあるかもしれません。残念ながらCLという大舞台は彼らの新たなモチベーションにはならなかったのでしょうか・・・。

戦術的に言えば昨シーズン、堅守速攻でエールディヴィジを制したチームから、クーマンは自分たちで主導権を取ってアクションを起こしていく、「フットボールをする」チームに変えようとしていましたが、中盤の守備ブロックと2トップを結んでいたデ・ゼーウがいなくなって攻撃の連動性がなかなか生まれなかったことが痛かったです。得点王エル・ハムダウイの負傷離脱もありました。

さらに象徴的なのは16試合で5枚のレッドカード(内4枚が一発レッド)。ファン・ハールのもとであれだけしっかりしていた「ディシプリン」がまったく消えてしまった事。

クーマンはもともとシーズン前から「私は前任者(ファン・ハール。この2人の仲は現在よろしくない)ほど厳しく締め付けない」と言っていたので、ここに原因はありそうですが、もともと選手1人1人に役割を明確に決めて、それを守らせたファン・ハールの後に、選手1人1人に自分たちで考えさせて能動的なフットボールをさせようとするクーマンを選んだAZのディレクター陣にも責任はあるでしょう。

キャプテンのスハールスも「クーマンの要求に応える準備は僕らはできていなかった」と言っているように、カンピューンチームとは言え、まだまだフットボール選手として未熟な選手達に大人のフットボールをさせようとした、もしくは敢えて悪い言い方をすれば、アルクマールという田舎の選手達に突然アムステルダムアイントホーフェンの都会的なフットボールをさせようとしたのが失敗と言えるかもしれません。

それでもクーマンのもとで次第にまとまってゆき、結局4-2-3-1で縦に速い、好調 レンスのスピードを活かしたチームで、第11節アヤックスの前半、第13節フェイエノールト戦の後半と良いフットボールを見せ不安定ながらも少しずつ調子を上げていったものの、第16節フィテッセ戦で再び今季最悪に近いゲームをしてホームで1-2敗戦。翌日朝解任が発表されました。

多くの人が「早すぎ!」と驚いたものの(第2GK、ベテランのディドゥリチャは『まったく不当な解雇』とフロントに不信感を表すコメント)、「これも仕方無しか」と思う面もあるのもまた事実かと思います。

さて、将来に目を向けましょう。

AZは8日の夜に噂通りディック・アドフォカートの監督就任を発表。ベルギー代表監督との兼任で今シーズンいっぱいの契約ながら、ファン・ハール同様規律に厳しい監督で、いまのAZを任せるにはこれ以上ない人物(正直アドリアーンセの期待もありましたが)。EK2004では散々叩かれましたが、その後のゼニト・サンクトペテルブルクでの活躍でオランダでも再評価されています。早速9日のCL Rスタンダール・リエージュ戦はベンチには入らず、土曜のPSV戦からベンチに入るとのこと。