今回はDundesliga: Hertha BSC - Eintracht Frankfurtにおいて、終了直前にFrankfurtに与えられたpenaltyが明らかな誤審では無かったにも関わらず、ビデオ判定を経て取り消されたシーンについて。DFBによる今シーズンからの介入のバー(Eingriffsschwelle)の引き下げについて、判定の間違いと判定理由の間違いの違いについて、そして主審に2回目のチャンスは与えられるべきか?
1-1で終わるかに思われた規定時間の1分前にOliver Christensenが16m内でRafael Borréを倒し、Schiedsrichter Frank Willenborgがスポットを指さしたが、Video-Schiedsrichter Markus Schmidtが介入し、90秒のレビューの末にpenaltyと警告を取り消しに。
ヘルタ・ベルリンvsフランクフルト
— ハジメっち (@verdy0504) 2022年8月13日
当初はPKの判定だったが
VAR確認後ノーファールの判定
あなたが主審ならどっち?#ヘルタ・ベルリン#フランクフルト pic.twitter.com/r0EJURlgoD
Schiedsrichter Frank Willenborgの試合後の説明
「フィールド上ではkeeperが選手の足を引っ張った(Wegziehen)という認識だった。最初は明確に思えた。映像でも接触が見えたが、それが選手が倒れた原因では無い。私にとってこれは軽くかすめた(Streifen)というもの。つまり低い強度の衝撃 (Impuls )」
「最終的に正しい判定が下されることが私にとっては重要。そのために時間をかけて判断し、きちんと評価をしたい。適切に体勢を見たかったし、それを見逃したくは無かった。試合運営にも合った判定が出ることも私には重要だった。私は非常に寛大な笛を吹いていたし、プレーを流していた、この接触が中盤で起きても私は吹かなかっただろう」
当然取り消されたFrankfurterの怒りは大きい。
Kevin Trapp:
「最終的にElfmeter (penalty)を科すのに十分かどうか私には分からないが、Video-Schiedsrichterは明確な誤審を修正するためにいるんだ。Schiedsrichterが判定を覆すのに10分必要なら、それは私にとって明確な誤審では無い」
Oliver Glasner:
「明らかなElfmeter. 両チームがミスをしたように、Schiedsrichterもミスををした。我々は完全には満足していないが、受け入れるしか無い」
ドイツの審判podcast: Collinas Erben主宰者の一人 Alex Feuerherdtによる解説:
「下された判定が、それを維持することが許せないほどklar und offensichtlich falschだったかどうかという疑問が生まれる。VARの介入は明らかな間違いが発生した場合のみ行うべきであり、物議を醸す判定を議論の余地の少ないものにするために行われるべきでは無い」
「ただ、klarer und offensichtlicher FehlerがあったかどうかがVARとRefereeの間でどのように判断されるかを知っておくのは有用だ。基本的にRefereeは自分の認識をVARに説明し、Video-Assistentがそれを映像素材と比較することによって行われる。明らかな矛盾がある場合、多くの場合はOn-Field-Reviewの助言が続く。今回のケースではWillenborgが足への"Wegziehen"があると認識していたと伝えていた。しかし映像は明らかにそれを示しておらず、Christensensの手の平とBorrésの足首に短い接触があっただけであり、Eintrachtの攻撃者の転倒の原因として判断しなければならないものでは無かったのは間違い無い」
「一方で、外側から見ているとSchiedsrichterがVARにどのような認識を伝えたかは正確には分からないため、下された判定全体で認識しがちだ。今回のように、penaltyの笛が正当であると判断することができるが、それにも関わらずSchiedsrichterの間違った認識に基づいた判定という理由でVARによって呼び出されるという事態は起こり得る」
「次のことも知っておく必要がある: 主審はモニターの前に駆けつけると、見せられたシーンを完全に一から再評価する。もちろんVARが主審の認識の誤りや不足を特定して勧めた場合のに、彼はReview Areaに行く。そしてもちろん、彼が自分が間違っていた、または重要な何かを見逃していたと確信した場合のみ、判定は変更される。しかし重要なのは、彼の最初の判定は、彼がまず超えなければならないバリアーでは無いということ」
「シーズン前にSchiedsrichter-Chef Lutz Michael Fröhlich und der Projektleiter der Video-Assistenten, Jochen DreesはMedienworkshopで公の場でのVARに対する批判はVARが介入を控えたと思われた場合、もしくは実際間違って介入を控えた場合に特に強くなると指摘していた。メディアとclubsでしばしば言われるように、Schiedsrichterは取り返しのつかない判定を下す前に自分で映像を見る機会を与えられるべき。一方でKölnからの不当と思われる、または実際に不当な介入はほとんど起きず、面倒を起こすことは滅多に無い」
「そのために(DFB)ではVideo-Assistentenに対し、必要であるならば滅多に無いよるは頻繁すぎるほどにOn-Field-Reviewを行うように主審に助言するよう指示されている。物議を醸すケースではRefereeが最終責任者であるため、ある面ではこれは理解できる。一方でVARにとっての介入の閾値(Eingriffsschwelle)がklaren und offensichtlichen Fehlernが起きた場合のみという原則がかなり弱まる程度まで下がる可能性もあり、それではVideo-Assistentenの基本的な考えに矛盾しているかもしれない。状況は依然複雑なままだ」
「それにも関わらず、自分の考えとアプローチを非常に包括的に分かりやすく説明してくれたFrank Willenborgに感謝する。彼はVAR Markus Schmidtmに相談した後にもう確信が持てず、し合いを替える可能性があるpenaltyをそのまま与えたくなかった。『最終的に正しい判定が下されることが私にとっては重要』とWillenborgは語った。だからこそ彼は『時間をかけて、正しく評価』をした。スピードより正確性。そしてOsnabrück出身の43歳のSpielleiterが示したように、透明性はより多くの容認を生み出す」
判定自体は間違えていないが、判定理由が間違えていた場合もレビューを勧めることができるという方針は過去にもUEFAで実践されており、外からは非常に分かりにくいがそれ自体は理解できるもの。ただ今回は明らかに接触があり、それによって攻撃側の選手が倒れたという判断を否定できる材料が全く無く、完全に「『誰が見ても間違い』では無いが、『主審個人にとっては間違い』」だったに過ぎないというケースなため、最初の判定が"clear and obvious error" ("klarer und offensichtlicher Fehler")として変更できるものだったのかどうかは大いに疑問が残るだろう。
「clear and obvious errorとは何か?」というこの制度の本質的な問いは未だに多くの混乱を時に生んでおり、この先も生み続けるだろう。特に100% errorのみ修正という原則を強調しているKNVBの人々は"discutabel is acceptabel" (議論の余地があるなら容認される), 「VARは主審に2回目のチャンスを与えるためにいるのではない」と繰り返し説明しているのに対し、より柔軟に動き始めたDFBは大きく違う方向に舵を切ったように思える。しかし過去に「判定の間違いと判定理由の間違いの違い」でも取り上げたように、ここまで介入のバーを下げるなら、もう主審とVARの通信を試合中から完全に公開するしか理解と透明性を得る手段は無いだろう。ドイツでも試合後に主審がカメラの前に立つことは時にあるがオランダほどでは無く、そのオランダでさえも時にカメラの前に立つことを拒否する主審はいる。「100% errorのみ修正する」という原則から離れるほど、なぜ判定が修正されたのかは理解が難しくなる。
果たしてここまで介入と判定修正のバーを下げ、主審に2回目のチャンスを与えた場合にどの程度の頻度で判定修正が行われるのか。それが選手や観客にどのような影響を与えるのかが注目される。