再びカンピューンスハップを長く争うことを目標に迎えた2018-2019シーズンだったが、ウィンターストップを前に10pts以上の差を付けられてまたしても失望の結果に。トップ・トゥヴェーの成績が良すぎるのは確かだが、ピッチ上でフェイエノールト自身 説得力のあるフットボールをほとんど見せられなかったことが、EL予選敗退と併せて最大のマイナス・イメージだった。実際トップ・パフォーマンスと言えるのはPSV-thuisの前半だけであり、それ以外はほぼ全て最低レベルを下回っていたと言っても良い印象が残ってしまった。
金銭的に急激な成長を続ける2クラブとの差が徐々に大きくなっている現状は誰しも危機感を持っているが、「個々の選手のクオリティが足りない」と嘆く前に、「現状のクオリティで出せる普通の力を発揮させる」という段階がクリアできていない状況では、これだけの差を付けられても仕方なく、デニー・ランツァートを新たに迎えたテクニカル・スタッフが今シーズンもここまでは「不十分な仕事」と判断されても否定できない。この冬にジョヴァンニ・ファン・ブロンクホルストとの残り半年の契約について話し合うことになり、お互いの選択が長期的な方向性を大きく左右することになる。
【総括】
昨シーズンから最大の変化がカリム・エル・アマーディが去ったことなのは間違いない。チーム・リーダーであり不動のコントローラーだった彼の代わりにソフィアン・アムラバトでは無くヨルディ・クラーシをレンタルで連れ戻すことを選択したが、長らくプレーしていなかった彼が以前のクラーシの姿をなかなか取り戻せていないのは大きかった。思うようにプレーを加速させることができず、特に前へのプレッシャーという面では非常に精彩を欠いたことで、チーム戦術の重要な部分が機能しなかった。
ヨルゲンセンがWKから怪我を負って戻って以降もなかなか完璧にフィットせず怪我を繰り返したように、チーム全体がフィジカル・コンディション面で決して万全で無かったのは否定できない。欧州戦が無いというメリットがありながら、足をつる選手も多く、シャープさに欠けた。
得点35, 失点20はトップクラブよりもサブトップの数字。ボールを持ってもスローな組み立てで相手の守備を崩すクリエイティヴィティに欠ける傾向はプレシーズンに課題とされていたが、組み立てで中盤や前線の選手が立ち止まってしまう状況は今シーズンも変わらなかった。ボールを失った際の対応も悲劇的に悪く、カウンターを喰らって危ないシーンを作られることが恒例に。その結果、今シーズンも第1節 デ・フラーフスハップ-uit (2-0), 第16節 フォルトゥナ-thuis (0-2)と今シーズンも昇格チームに敗れる屈辱を味わった。
ポジティヴな材料を探せば、まずファン・ペルシが良いプレシーズンを過ごして多くの試合で90分間プレーできるだけフィットして違いを作ったことだろう。エールディヴィジでは圧倒的なテクニックとクリエイティヴィティ、フィニッシュ能力を備えており、まだまだ7,8割という試合でもいるといないとでは明らかにチームのフットボールに差が大きい。それはヨルゲンセンが不在だったことでさらに明確だった。また、トニー・フィレーナが力強いシーズンを送っているのは誰の目にも明らか。シーズンの出だしこそ精彩を欠いていた印象だったが、代表戦でトップ選手相手に好プレーを見せたことが自信になったか、遂にエールディヴィジのトップMFの1人と呼べる存在になりつつある(チームのパフォーマンスが低調なために各紙のクラッセメントでの評価が付いてこないのが残念)。
順位表で孤独な3位となってリーグ戦での目標を見失いがちな現状で期待されるのはタレントのブレイクだが、タイレル・マラシア、ディラン・フェンテが期待に応えられず、第1GKの地位を得たジュスティン・バイローも決して悪くは無いがフェルメールを控えに回すことについて多数を納得させるパフォーマンスとは言えなかった。ルチャレル・ヘールトライダ、ヴァウター・ブルヘル、ヨルディ・ヴェールマンはベンチには座るも出番は(ほとんど)無く、17歳オルクン・コクチュが第15節 エメン-uitで後半45分間出場というチャンスを得て1G1Aという素晴らしいデビューを果たしたのが唯一の光明。今シーズンから独立リザーブチームを発足させてアカデミーを卒業したタレントたちが成長の場としてトレーニングと試合を行っているが、決してベストの環境では無く、リザーブリーグで来シーズンのフットボール・ピラミッド参入が認められる成績を収めるのが現状大きな目標。
【個人レポート】(数字はエールディヴィジのもの)
Keepers
Justin Bijlow 15試合出場
プレシーズンで第1GKと認められてシーズンに入り、多少のミスと不安定な動きはあったものの最低限のパフォーマンスは見せた。特にJCスハールでの活躍は前半戦のチーム全体のハイライト。大きな将来性があるキーパーなのは確かであり、今は経験が積めること自体がプラスではあるが、DFラインとの連携も不十分でチーム全体の守備を危うくしているという面もあるのは確か。
Kenneth Vermeer 2試合出場
バイローがフィットしなかったリーグ戦2試合、そしてベーカー戦キーパーとしてベーカー戦3試合に出場。本人は第2GKとしての役割を受け入れているが、冬にオファーが来れば移籍にはオープン。
Joris Delle 0試合出場
ブラッド・ジョーンスが去ったことで経験ある第3GKとして獲得。
Ramón ten Hove 0試合出場
バイローと並ぶアカデミー出身のGK. リザーブでもたまにプレー。将来を考えればレンタルは有益な選択肢だが・・・
Verdedigers
Jerry St. Juste 13試合出場1得点1アシスト
右バックのスタメンとしてプレー。フットボール能力は高く、アグレッシブな攻撃参加は魅力だが、相手へのマークがおざなりで右CBのボテギンとの連携が危険なシーンも多かった。冬場は怪我と出場停止で欠場。
Bart Nieuwkoop 8試合出場
プレシーズンにパッとせず右バックの控えに。シン・ジュステの怪我や出場停止で度々チャンスを得たが、よりベターであることは証明できず、特に第17節のADO-uitで退場という失望でウィンターストップ入り。後半戦も控え濃厚で、フェイエノールトでの将来がまだあるか微妙に。
Eric Botteghin 10試合出場1得点1アシスト
ファン・ベークが低調なプレシーズンだったことで当然のスタメンとして入ったシーズンだったが、力強さを欠くパフォーマンス。特にフットボール能力とスピードの無さが大きな問題となり、負傷欠場のPSV-thuis以降はフィットしてもファン・ベークの控えに。
Sven van Beek 8試合出場
低調なプレシーズンで控えに回り、その後数回チャンスを得ても納得させられるパフォーマンスでは無かったが、11月に2021年まで契約を延長し、第14節PSV-thuisでスタメンのチャンスを得るとトップパフォーマンスを披露。そのままスタメンに戻ったが、やはり及第点を下回る試合も。現状セレクションでベストのCBではあるが、クオリティから期待されるプレーはまだそれほど見せられていない。
Lutsharel Geertruida 1試合出場
将来が期待される右利きDFだが、現状では怪我の多い両右バックの控えとして3番手。本人のためにはレンタルがベストだが、シン・ジュステとニューコープに怪我と出場停止が多いために3番手が必要なのも確かで、おそらく今シーズンはこのままか。
Jan-Arie van der Heijden 17試合出場2得点
DF陣では唯一の全試合出場。やはり力強さを欠いて低調なシーズンだったが、チームの調子が上向いた冬場に自信を取り戻してヤン・スハーリーなプレーも。スピード不足で苦しむ状況は時にあるがポジションを脅かせる左利きCBはいないため、当面安泰ではある。
Tyrell Malacia 11試合出場1得点
ハプスの長期離脱でスタメン左バックとしてシーズンに入ったが、守備面での未熟さを露呈。攻撃参加した時の迫力はあるが、組み立てでボールを持った時も不安定で批判は少なくない。
Calvin Verdonk 6試合出場2アシスト
控えだったNECへのレンタルから戻り、ハプスの長期離脱によって左バックの2番手に。出番があるのかと思われたが、マラシアが不安定だったことで守備と組み立てでより安定感のあるフェルドンクが相手によっては選択される結果に。ベターでは無いが、劣っている訳でも無く、ハプスの復帰が待ち遠しいことを明確に実証している。
Ridgeciano Haps 0試合出場
昨年11月の怪我から未だ戻れず。9月頃からトレーニングピッチに姿を見せるようになるも、リザーブで試合にでることもできておらず、情報公開ルールが厳しくなったことで謎のまま。
Middenvelders
Tonny Vilhena 17試合出場3得点1アシスト
MF陣唯一の全試合出場。ほとんど怪我の無い肉体の強さは変わらず、前半戦非常に悪かった中盤の中で1人トップパフォーマンスに近い内容だった。これはペアを組むクラーシの存在感が薄かったことでフィレーナの支配力に依存することになった結果とも言える。ただやはり前線に決定的パスを通す能力は彼には無く、得点力という点でもやや物足り無い出来ではある。今シーズン最後までこのパフォーマンスが続いて、良い額のオファーを受けられることを期待。
Jordy Clasie 16試合出場1得点2アシスト
3年ぶりにデ・カイプに復帰も、長らくプレーしていなかった影響は予想以上に大きく、かつての姿を未だ取り戻せず。ボールを持った時は徐々に良いボールを出せるようになってはいるが、ボールを持っていない時の判断、競り合いの力強さに欠け、このウィンターストップでのコンディション作りに期待。
Jens Toornstra 16試合出場4得点
ヨルゲンセンの欠場でファン・ペルシがスピッツ起用だったこともあり、ほぼ常時スタメンでプレー。ただ組み立てが機能しない状況では得意のラン・アクションも効果を持てず、存在感が消える試合が多かった。チームが上手く行っている時は非常に有効な存在なのは確かだが、ヨルゲンセンとファン・ペルシが同時にフィットした時はやはりポジションは危うい。
Yassin Ayoub 8試合出場1得点2アシスト
大きな期待を持たれた補強だが、プレシーズンのトレーニングに参加できなかったことで調整が遅れ、ほとんど出場時間を得られず。小さなスペースでのテクニックを考えればトールンストラとポジションを争って欲しい存在だが、ウィンターストップ前はコクチュがその存在に。
Renato Tapia 4試合出場
WK出場後も控えの立場は変わらず、たまに終盤の途中出場で出てくる程度。ウィンターストップ前の第17節 ADO-uitでスタメンのチャンスを得たが、いつも通りのパフォーマンスでいい加減お別れすべき時期。
Orkun Kökçü 3試合出場1得点1アシスト
ファルケノールト待望のタレントが第15節 エメン-uitでトールンストラの負傷によりデビュー。45分間で見事なプレーを見せて1ゴール1アシストも記録した。近い将来にクリエイティヴィティ不足問題を解決してくれるとヘット・レヒューンの期待を一身に背負う存在であり、後半戦の出番も少なくないはず。
Wouter Burger 0試合出場
ファルケノールトで育ったトップタレントであり、プレシーズンからそのままトップチームに参加。ベーカー戦でアマチュア相手にデビューを果たし、17歳になったことで2023年までの長期契約でも合意した。エールディヴィジ・デビューも近い将来にあるはずだが、ポジション的にフィレーナと被っているために出場時間を得られる機会は今シーズンはまだ多くは無いだろう。
Jordy Wehrmann 0試合出場
ファルケノールトで育ったコントローラー。プレシーズンに帯同し、数回トップチームのゲームセレクションにも入り、2020年まで契約を延長したが依然出番は無し。ターピアが去ることを考えればコントローラーの2ポジションでクラーシ、フィレーナ、アユプに続く存在のはずで、後半戦出番が無くは無いはず・・・
Aanvallers
Steven Berghuis 17試合出場5得点8アシスト
FW陣では唯一の全試合出場。ミスも多かったが、毎試合個人アクションから少なくないチャンスを作り、フィレーナに次いでトップパフォーマンスに近いプレーを見せた。特にファン・ペルシの出場時間が増えたことでインスピレーションの合うトップ・デュオに。第3キャプテンとしてキャプテンマークを巻く試合もあり、試合後に率直な戦術的コメントを残すことが多いが、このままフットボールを楽しめないシーズンになれば夏に移籍を考えるだろう。
Luis Sinisterra 3試合出場
未知のコロンビア人バイテンスペーラーとして加入し、適応するのに時間がかかるといわれていたとおり、ベンチ入りはするもほとんど出番は無し。12月のベーカー戦ユトレヒト-thuisでベルフハイスの怪我によって45分間出場時間を得たが、まだまだチームのフットボールにフィットしていないことが示された。
Sam Larsson 16試合出場4得点4アシスト
ボエチウスが去ったことで結果的に不動の左バイテンに。相変わらずほとんど存在感の無い試合が続いたが、PSV-thuisで突然見事なプレーを見せるとその後ヘーレンフェーン時代を思い出したかのようなパフォーマンス。しかしやはり長くは持たずにフォルトゥナ-thuis, ADO-uitと低調なプレーに。ベルフハイスのように攻撃面で左バックのサポートを得られないデメリットはあるが、本当にフェイエノールトで成功できのかどうか、後半戦は勝負の半年間に。
Mo El Hankouri 5試合出場
左バイテンの2番手として数回途中出場。現状奥行きを出せる唯一のバイテンスペーラーでスペースが広がった終盤のオプションだが、そこからゴール前に本当の脅威を作るところまでは行けず。後半戦も同じ起用が続くだろうが、そろそろ成長が無ければ将来が不安に。
Robin van Persie 13試合出場7得点2アシスト
良いプレシーズンを送って遂に90分間プレーできるコンディションでシーズン入り。低調なプレーのチームを事実上1人牽引していたが、冬場にコンディションを崩して欠場する試合も。最後のシーズンが濃厚であり、できるだけ良い状態で残り試合をプレーできることを願おう。
Nicolai Jørgensen 9試合出場2得点
WKから軽い怪我と共に戻り、その後も小さな怪我を繰り返してなかなかプレーできず。復帰した当初もコンディション不良を感じさせたが、ベーカー戦ADO-thuisでハットトリック、PSV-thuisでも力強さを見せて勝利に貢献したが45分間で負傷してその後は戻れず。ウィンターストップに再びフィットして良い後半戦を送れると良いが。
Dylan Vente 9試合出場0得点
良いプレシーズンを過ごしてブレイクの期待を持って入ったシーズンだったが、トップレベルに十分なフィジカルを備えていることを見せることはできず。前を向けるスペースがあればアクションを起こせるが、相手を背負ってボールキープができないために「レンタルに出すべき」という声が繰り返されるように。ジオは依然フェンテを高く評価するコメントを繰り返しており、ヨルゲンセンとファン・ペルシのコンディションが万全で無いことを考えればレンタルに出しにくいのは確かだが、本当に将来のスピッツとして考えるなら何かしら手を打つべきだろう。
Joël Zwarts 0試合出場
リザーブチームのスピッツとしてプレーし、トップチームの枠が空いた数試合でベンチ入りも出場機会は無し。体格には恵まれているためフェンテよりはフィジカルが強く、必要なだけのテクニックとスピードもあるが、デビューできるかどうか。