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代表とクラブ、ファン・ボメル騒動のまとめ

9月のブレーメン戦以来右膝に痛みを抱えながらプレーしていたバイエルンミュンヘンとオランダ代表のキャプテン マルク・ファン・ボメル。金曜日のモルドバ戦後にやや膝を悪化させたことで、バイエルンミュンヘンはKNVB(オランダ・サッカー協会)に対しファン・ボメルを早急にクラブに戻すことを求めたが、KNVBは休養を与えた後に月曜にMRI検査を実施しレントゲン写真をバイエルンミュンヘンに送付。代表のメディカルスタッフだけでなく外部のドクターからも問題はなくプレーできるという診断を受け、さらにバイエルンミュンヘンに対して代表にクラブのメディカルスタッフを送ってもらっても構わないと連絡した。

結局スタッフを送らなかったバイエルンミュンヘンだが、火曜日のスウェーデン戦当日になってKNVBに電話でファン・ボメルをプレーさせないように要求。さらに直接ファン・ボメル自身にも出場しないように伝えた。当然スウェーデン戦という重要な試合前に騒然としたオランダ代表だが、ファン・ボメル自身がプレーを望んだことと、医学的に問題がなかったことからいつも通りスタメン出場させた(試合は4-1と点差が離れたことで72分で交代)。

いつも通り中盤で力強いパフォーマンスを見せたファン・ボメル自身は試合後に「膝には問題はなかった」とコメント。代表監督のベルト・ファン・マルワイクは試合前の重要な準備時間にバイエルンミュンヘンからプレッシャーを受けたことに不快感を露わにし、KNVBのファン・オーストフェーン会長も「フェアなやり方ではない。愉快な出来事ではなかったと伝えるつもり」とバイエルンミュンヘンを非難した。

さらに一晩明けた水曜日のドイツBild紙にバイエルンミュンヘンルンメニゲ会長のコメントが掲載されたが、「ファン・マルワイクとファン・ボメルは義父、義息の関係であり、これは代表監督とキャプテンにとって普通の関係とは言えない。ファン・ボメルにはプレーしなければならないとファン・マルワイクとKNVBから過剰なプレッシャーがかけられている」というオランダにとっては到底受け入れられない不条理なものだった。

KNVBとバイエルンミュンヘンの関係がこじれたのは南アフリカでのワールドカップ後のアリエン・ロッベンの負傷が明らかになってからであり、現在も責任を認めていないKNVBに対しバイエルンミュンヘンは法的手段も辞さない微妙な関係にあることが、今回の件の下地になったことは言うまでもない。バイエルンミュンヘンはオランダ代表のメディカルスタッフをまったく信用しておらず、今回かなり強引な手段に出たわけだ。

だがKNVBにとってみればまったくFIFAUEFAのルールに則っていないバイエルンミュンヘンの要求に応えられるはずもなく、バイエルンミュンヘンもそれは分かっていたはず。見え見えのプレッシャーをかけてきたわけだが、昨シーズンの魅力的なフットボールでオランダでの得た人気を再び落とす結果となるのは火を見るよりも明らかで、案の定オランダの各メディアサイトではドイツ人の傲慢さを非難するコメントが殺到している。

ビッグマネーが動く現在のフットボール界では選手は自分がプレーするかどうか決める権利を持てないでいる(ちなみにルンメニゲは現役時代のワールドカップで負傷をおしてプレーした経験がある)。現実的に考えるのなら、クラブと代表が共同で選手がプレーできる状態にあるかどうか判断できるシステムを作っていくようにビッグクラブの方から働きかけるべきだろう。数週間膝を痛めていた状態でプレーさせていた選手を、いざ代表戦での大一番前に「プレーさせるな」と脅し、後で怪我が重くなったら補償金を要求するという手立てよりはるかに前向きだしフットボール界のためになる。もしユーロの決勝でオランダとドイツが当たった時に同じ状況になっても、出場しないようにバイエルンミュンヘンは傲慢に要求するのだろうか。