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VAR教材: オフサイドラインテクノロジーでは1 pixelでもオフサイド

今回はオフサイドラインテクノロジーについての基本的な話と「何が問題なのか」という点について。

 

2025.11.30 
J League: アビスパ福岡 - ガンバ大阪

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オフサイドチェックはまず最初に攻撃側の選手によってボールがプレーされた瞬間 (point of contact) を決める所から始まる。これは映像をコマ送りにし、その選手が「ボールに触れた事が確認できる」最初のコマが選ばれる。

 

次にオフサイドライン (守備側の選手か稀にボール) を引き、攻撃側の選手のラインが引かれる。具体的には該当する選手のどの部分が一番奥かをVARが指示し、オペレーターが機器を操作してそこにポイントを決めるソフトウェアが自動的にグラウンドレベルにラインを引く。

 

参考映像

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1 pixelでもオフサイドオフサイド

今回のケースでは青いオフサイドラインより赤い攻撃側のラインがごく僅かに奥に引かれた事で、大部分を青ラインの大部分を赤ラインが上塗りした。画像をよく見れば、僅かに青ラインが手前に残っているのが分かるだろう。オフサイドポジションかどうかは昔から今も、そして今後もずっと変わらず単純なライン判定であり、攻撃側のラインがオフサイドラインより少し(1 pixel)でも奥に引かれればオフサイドポジションと判断される。

 

 

問題点
感情的な問題は全く無視して、オフサイドラインテクノロジーにはよく知られたいくつかの問題点が存在する。まず第一にpoint of contactの精度。3Dオフサイドラインテクノロジーでは50fpsの映像が使用されるのが主流だが、常に正確な瞬間を捉えられるわけでは無く、ボールが高速で動いている場合、フレーム間にpoint of contactが存在する可能性は消せない。例えば連続したフレームAとフレームBの間にpoint of contactがあり、実際 フレームAに近かったとしても、フレームAではボールへの接触が確認できないため、初めてそれが確認できるフレームBがpoint of contactとして採用される。特に攻撃側と守備側の両選手が逆方向に交差した場合、1つのフレームの違いが結果を変えることはあり得る。

 

さらに参考映像で見られるように、オペレーターが体の最も奥にある適切な部分にポイントを決められるようにVARが指示を出すことができるが、果たして1 pixelの精度を彼らは保証できるだろうか?VARとオペレーターが誰かによって変わる可能性は無いと言えるだろうか?そして、同じVARとオペレーターであっても、同じシーンで1 pixelもズレずに再び全く同じ場所にポイントを決めることができるだろうか?

 

テクノロジーを使用している以上、最終的にテクノロジーによって引かれたラインが明らかに間違っているという証拠がない限り、それを受け入れるのは論理的であり、それはゴールラインテクノロジーからずっと続いている。しかしオフサイドラインテクノロジーでは、テクノロジーがラインを引く前は全て人による作業であり、そこに極端な精度を求めることは決してできないという前提がある。それにも関わらず、時に1 pixelという極端な精度で判定を修正されてしまうのがこのテクノロジーの抱える根本的な問題だ。

 

取り得る選択肢
決して解決策とは言えないが、テクノロジーのこうした問題に対する態度として存在するのが誤差ルールだ。ヨーロッパではEnglish Premier LeagueとEredivisieで採用されていることで多少知られている。「それぞれ10 pixelの幅を持つ赤と青の2ラインが少しでも重なった場合は最初の判定のまま、もしくは常に攻撃側の利益とする」。画面上の10 pixelはフィールド上での5 cmに相当し、つまり10 cm未満が誤差の範囲内として許容される事になる。

 

例: 攻撃側 PSVの選手の上半身をポイントとする赤ラインが表示されておらず、青ラインのみ表示されているため、ここでは誤差ルールが適用されているのが分かる。

 

参考記事

mijnfeyenoord.hateblo.jp

 

point of contactの選択や体の最も奥のポイントの決定をテクノロジーに任せる半自動オフサイドラインテクノロジーも既に存在しているが、ゴールラインテクノロジーと同様に今後も世界の一部の金持ちのための玩具であり続けるのは変わらず、ここでは触れない。

 

オフサイドラインテクノロジーに対する最も根本的な解決策は実は存在し、それは「そもそも使用しない」という選択をする事だ。MLSの審判部門を統括する組織 PROは責任者 Howard Webbのもとで世界でも最も早くVARを導入した組織の1つであり、他の組織が徐々にオフサイドラインテクノロジーを導入していく中で、素の映像で明らかな間違いのみ修正するという姿勢を選び、数年前にWebbがPGMOLに移籍した後もそれを変えていない。16mなどフィールド横に置かれた限られた数のカメラ映像で明らかな証拠が得られる機会は限られるため、ラインテクノロジーがあれば避けられる誤審が多少避けられない事は確かにあり、明かかどうかがVARの判断に委ねられるために基準に多少の曖昧さは生じるが、オフサイドラインテクノロジーを導入する事で新たに生じる問題は全て避けることができる。