総括
フェイエノールトの2018-2019シーズンは再び失望のものに。欧州戦はEL予選をTrencínでの悲劇的敗戦の末に早々に敗退、エールディヴィジでは第1節でデ・フラーフスハップ-uitで完敗し、調子の上がらないままウィンターストップを前に上2つに10pts差を付けられ今シーズンも全くカンピューンスハップを争うことができなかった。ベーカー戦もフィナーレに届かず、JCスハールを獲っただけの事実上無冠。サブトップも低調だったことで大きな問題は無く3位で終われはしたが、何よりもフットボールが低調で、見ていて楽しめる試合があまりに少なすぎた。デ・カイプでのデ・クラシケル(6-2)はそれ自体は間違いなく伝説的な試合ではあったが、贔屓目に見ても今シーズンのフットボールは近年で最低で、悲劇的だったと言う他無い。トップゲームこそ説得力のある試合を見せたが、デ・フラーフスハップ、PEC、エクセルシオールとのアウエーゲームを落とし、ホームでもヴィレムIIやADOに敗戦。内容的にもホームかアウエーかを問わず悪い試合が続き、「不安定」というよりもシーズンを通して攻守に低調だったと言った方が適切だろう。当然高まる批判の中で監督のジョヴァンニ・ファン・ブロンクホルスト、テクニカル・ディレクターのマルティン・ファン・ヘールが辞意を表明。ショーケースをスハールとベーカーで満たした一つのサイクルが終わることとなった。
大きな誤算があったとすれば、カリム・エル・アマーディという不可欠の大黒柱の代わりとして帰還したヨルディ・クラーシが見る影も無いほど低調なプレーだったこと、そしてWKから怪我を負って戻ったニコライ・ヨルゲンセンも再び低調なシーズンを過ごし、前線でロビン・ファン・ペルシとの共存がほとんどできなかったことだろう。周りからのプレッシャー、チーム内のフラストレーションから、シーズン前のジャン・パウル・ボエチウスの規律違反からの放出、度重なるスティーヴン・ベルフハイスのイライラからのファールによるイエローカード、規律違反による出場停止、そしてクラーシのファン・ブロンクホルストに対する悪態による出場停止、ヨルゲンセンのナートラッペンと、悪循環が止まることが無く、結果的にもサイクルの終了はもうやむを得なかったとも言える。
MVP
ベルフハイスは確かに今シーズンもエールディヴィジで最もチャンスを作る選手ではあったが、あまりに低調な試合が多く、シーズントータルで見ればファン・ペルシが優る。この年齢、キャリアのラストシーズンにもピッチ上で常にベストプレイヤーであり続け、さらにキャプテンとしてチームを牽引しようとオーラを放っていた。それが結果に結びつかなかったのは残念だが・・・
来シーズンに向けての展望
ファン・ヘールが新監督にヤープ・スタムを選んだ後に退任を発表し、テクニカル面のポリシーを決めるディレクターが未だ不在。しかし多くの批判を浴びながら退任する様子は無いヤン・デ・ヨングのもとで「ユース重視」へ舵を切ることは確定事項とされている。ファン・ペルシが引退、フィレーナが移籍濃厚、ヨルゲンセンとベルフハイスも不確定とキープレイヤーたちが抜ける(可能性がある)中で、ユース出身のタレントたちのブレイクがここ2年のデ・カイプに溜まった停滞感とフラストレーションを振り払うには不可欠。幸いにも現在のOnder19にはタレントが揃っており、すでにディラン・フェンテ、タイレル・マラシア、ルチャレル・ヘールトライダ、ジュスティン・バイローがデビュー済み。その下の年代でもオルクン・コクチュがデビューし、大きな印象を残している。さらにアシュラフ・エル・ブシャタウィ、ヴァウター・ブルヘル、ラモン・ヘンドリクスらがトップチームに上がるはずで、ヌーフォル・バニス、今シーズン後半にドルドレヒトにレンタルされてプロ・デビューしたクリセンショ・ソンマーヴィルらもプレシーズンにトップチームに帯同してチャンスを与えられるはずだ。当然ある程度の上手い補強での成功は必要だが、それでも少なくともこの2シーズンより前進するにはタレントたちのブレイクこそが鍵を握っており、スタムにかかる責任は大きい。厳しい条件なのは間違いないが、それでもタレントたちにチャンスを与えなければクラブとして成長の見込みがあまりに無いのは明らか・・・
ユースとヨング
冬にステンリー ・ブラルトがファルケノールトに戻り、新トレーニング施設も完成間近とユースの雰囲気は間違いなく良くなっている。黄金世代と評されるOnder16を始め各チームに期待できるタレントたちが多く、重要なOnder19でもディルク・カイトとコル・アドリアーンセのコンビで見事にカンピューンスハップを争い、来シーズンはYLに出場できる可能性がある。一方で今シーズン 独立チームとして始動したヨングはその意義を証明するほどの活動はできず、1月にヤーリ・スフールマン、ジョエル・ズワルツらが抜けてまともにトレーニングできる人数もなくなって結局解体。再び主にトップチームの控え選手たちがプレーすることに決まった。ファン・ヘールの退任後に再び議論されたフットボールピラミッドへの参加も結局見送りが決まり、ユースを終えたタレントたちの成長の場としては、早ければ2020-2021シーズンから始まるOnder21リーグが「大きな潮の変わり目」として期待される。
Keepers
Justin Bijlow 16試合出場
プレシーズにテクニカル・スタッフを納得させて第1GKとして迎えたシーズン。JCスハール獲得の主役になるなど活躍を見せたが、不安定なパフォーマンスで批判も浴びた。1月のウィンターストップ明け初戦 PEC-uitで左足を痛めて離脱し、そのままシーズンを終えた。来シーズンは再び第1GKを目指して再スタートに。
契約は2023年まで。
Kenneth Vermeer 18試合出場
プレシーズンにほとんどチャンスを与えられること無く第2GKに降格、不満は当然の状況でもベテランらしい落ち着きを見せ、バイローの負傷離脱で再びスタメンに。ミスが無かった訳では無いが、チームを助けるセーブが多く、依然ハイレベルなGKであることを証明した。ただクラブが将来のあるバイローを優先するならこの夏の移籍の攻勢は十分ある。
契約は2020年まで。
Joris Delle 2試合出場
第3GKとして1年契約で獲得され、バイローの長期離脱にフェルメールの怪我が重なったタイミングで2試合出場。試合での目立った印象は残していないが、経験ある第3GKとしての振る舞いに問題が無ければ新契約もありか。
契約終了。
Ramón ten Hove 0試合出場
ヨングのGKとしてトップチームにも帯同。バイローの負傷離脱でベンチ入りもしたが試合出場は無し。来シーズンはドルドレヒトへレンタルが決定済み。
契約は2021年まで。
Verdedigers
Jeremiah St. Juste 23試合出場3得点2アシスト
右バックのスタメンに定着したが、守備面の不安定さがチームの非常に大きな問題に。ボールを持った時のフットボール能力の高さは間違いないが、リスクを負いすぎるプレーな上に怪我も多かった。依然右バックへの適性が疑われる上、国外から多少の関心は持たれておりこの夏の去就はやや微妙。
契約は2021年まで。
Bart Nieuwkoop 13試合出場0得点0アシスト
プレシーズンにシン・ジュステとの争いに敗れて控え右バックに。その後も怪我を繰り返してほとんどフィットできず。失望のシーズンだったが、クラブを去る理由も無く、来シーズンの再起に賭けるはず。
契約は2020年まで。
Eric Botteghin 22試合出場2得点1アシスト
スタメンでシーズンに入るも12月にスタメン落ち。さらに数週間の負傷離脱もあったが、最終的にはスタメンに戻って守備ではまずまずのパフォーマンスを見せた。依然スピードの無さと組み立てでのクオリティの欠如は問題であり、本人はブラジルへの帰国も含めて国外挑戦の意思もあり、オファーがあればロッテルダムを去るタイミングか。
契約は2020年まで。
Sven van Beek 22試合出場0得点0アシスト
ようやくフィットしたものの低調なプレシーズンで控えに周り、ボテギンが低調だったことで途中からスタメンに定着。しかし不運なオウンゴールが続くなど説得力のあるパフォーマンスはあまり見せられず。現状国外から関心の噂も無く、何も無ければこの夏も残留で来シーズンの奮起に期待。
契約は2021年まで。
Jan-Arie van der Heijden 24試合出場3得点2アシスト
控えに左利きDFがいないために不動の存在だったが、チームの低調な守備によってシーズン後半戦は控えに。スピードの無さに目を瞑れば依然主力の1人で、年齢がネックで移籍の可能性もほぼ無く残留濃厚。
契約は2020年まで。
Tyrell Malacia 17試合出場3得点0アシスト
ハプスの長期離脱で再びチャンスを得たが、それをモノにはできず。プライベートの不幸もあって苦しいシーズンだったが、4月に輝きを見せて見事なゴールも決めて活躍。不動の存在へはまだまだ成長が必要で、来シーズンもフィットしたハプスと競争になるはず。
契約は2023年まで。
Calvin Verdonk 12試合出場1得点2アシスト
レンタル先のNECでもそれほどプレーできず構想外と思われたが、ハプスの長期離脱で左バックの2番手となると、守備面での安定度から度々優先されて12試合に出場。特に6-2のデ・クラシケルではマッチアップしたツィエクを完全に抑える素晴らしい活躍だったが、結局スタメンに定着はできず。契約が残り少ないことからオファーがあれば放出に。
契約は2020年まで。
Cuco Martina
11試合出場0得点0アシスト
ボテギンの怪我を受けてウィンターストップにレンタルされ、シン・ジュステとニューコープの怪我で右バックでもプレー。足りなかった人数を埋める存在ではあったが、それ以上では無く、ヘット・レヒューンの支持も受けられず。イングランドでの契約も残っており、このままお別れが濃厚。
レンタル終了。
Ridgeciano Haps
9試合出場0得点0アシスト
ステップアップ2年目の活躍が期待されたが、ほとんどフィットできない失望のシーズン。フィットさえすれば国内トップレベルの左バックとの評価は依然変わらないものの、高額の移籍金から考えればこの2年間は大きなマイナス。来シーズンこそと期待がかかる。
契約は2022年まで。
Lutsharel Geertruida 2試合出場0得点0アシスト
将来を嘱望されるも本職のCBとしてテクニカル・スタッフを納得させられず、ニューコープの怪我で右バックの控えに。しかし後半戦はマルティナの加入もあってOnder19に専念する結果に。Onder19ではコントローラー起用されて活躍など、今後の成長にはポジション選択が鍵か。
契約は2020年まで。
Middenvelders
Tonny Vilhena 33試合出場6得点5アシスト
相棒がエル・アマーディからクラーシに代わり、責任が増したことでパフォーマンスは間違いなく高まった。しかしやはりチーム全体が低調の中でチームを牽引する存在までにはなれず、シーズンを通して国内トップのMFであることを証明できたかと言えるとやや微妙だろう。セレクション内では絶対的価値を持つ存在ではあるが、ステップアップの時期なのは間違いなくこの夏の移籍は確実。
契約は2020年まで。
Jordy Clasie 33試合出場1得点4アシスト
エル・アマーディの穴埋めとして大きな期待を持たれてレンタルでデ・カイプに帰還したが、この数年ほとんどプレーしていなかったことからフィットしていないのは誰の目にも明らかだった。少しずつ良くなっていったのは確かだが、ボールを持った時も持っていない時も結局最後までかつてのクラーシには戻れず。チーム全体のフットボールが低調だったということもあるが、そのチームを牽引する役割を期待されていたことを考えれば大きな失望。イングランドでの契約が残っており、余程のことがなければこのままお別れに。
レンタル終了。
Jens Toornstra 32試合出場8得点5アシスト
ヨルゲンセンがフィットしなかったことで今シーズンもポジションでほぼ常時スタメンでプレー。6-2のデ・クラシケルでは4アシストと主役を張ったが、全体としては平凡なシーズン。売りの走力が機能すると活躍できるが、チームが機能しないと個人で打開するクオリティは無いため、フットボール能力とクリエイティヴィティで優るコクチュに待望論が。国外へのステップアップの意思はそれほど強くは無く、この夏も何も無ければ残留か。
契約は2021年まで。
Yassin Ayoub 16試合出場2得点3アシスト
クリエイティヴィティの欠如という問題を解決するピースとして大きな期待と共にフリー移籍で獲得されたが、またもサブトップからの補強失敗の一例に。フットボール・テクニックに疑いは無いものの、テクニカル・スタッフを納得させられず、一時はコクチュにも序列で抜かれた。終盤やや途中出場が増えたものの、現状への不満は明らかで、プレシーズンの状況によっては移籍を訴えるだろう。
契約は2022年まで。
Orkun Kökçü 11試合出場3得点4アシスト
Onder19でプレーしつつトップチームに参加すると、12月のエメン-uitで1得点1アシストデビュー。大ブレイクが期待されたシーズン後半戦で残念ならが出場時間が大きく増えることは無かったが、出場時間に見合った数字は十二分に残し、フットボール能力の高さと得点力でトップタレントぶりを見せた。クラブのユース重視への方針転換の象徴として、来シーズンはスタメンの期待がかかる。
契約は2023年まで。
Wouter Burger 1試合出場0得点0アシスト
EL予選途中出場でトップチームデビューし、期待を持って迎えたシーズンだったがエールディヴィジではチャンスが回らず、Onder19でプレーを続けながら最終節残り10分でようやくエールディヴィジ・デビュー。まだ雑なボールロストがあったり対応スピードに苦労する事がOnder19でも時にあるが、エヒテ・フェイエノールダーであり、現時点ではサポーターから無条件に愛される存在。トップチームで出場時間を増やすにはまだ成長が必要な印象だが果たして・・・
契約は2023年まで。
Jordy Wehrmann 0試合出場
プレシーズンにコントローラーとして印象を残すも、テクニカル・スタッフを納得させることはできず、ヨングだけでプレー。このまま構想外なら来シーズンはレンタルか。
契約は2020年まで。
Aanvallers
Steven Berghuis 33試合出場12得点12アシスト
チーム2位の11得点とチーム最多11アシスト、今シーズンもエールディヴィジでは最もチャンスを作る選手の1人だったが、全体的には機能しないチームの中でフラストレーションを溜めてマイナスに働く印象が強かったシーズンに。ファン・ペルシと並んで現チームでは別格の存在だが、再び国外挑戦の希望も強く、2年連続の失望の後で移籍の可能性は十分ある。
契約は2021年まで。
Robin van Persie 25試合出場16得点4アシスト
キャリアのラストシーズンでも別格のクオリティを示してチームを牽引。ヨルゲンセンがフィットせずスピッツ起用が多かったのはプラスに働いただろう。存在感が大きすぎて周囲が頼りすぎていたという声もあるが、サポーターの支持を失ったチームの中でほとんど唯一のスタディオンへ足を運ばせる存在だった。
引退。
Nicolai Jørgensen 24試合出場7得点2アシスト
WKから負傷して戻ると、ウィンターストップ明けまで復帰と怪我を繰り返してほとんどフィットできず。ようやくフィットした後半戦もファン・ペルシと上手く共存できず、最後はフラストレーションからナートラッペンで一発退場と、カンピューンスハップに貢献した1年目以降評価をさらに下げることに。契約は残っているが、本人はステップアップを望んでおり、オファーがあればまだ値が付く内に売却されるだろう。
契約は2021年まで。
Sam Larsson 32試合出場6得点8アシスト
ボエチウスの移籍で念願の不動のスタメンになるも、6ゴール8アシストと平凡な数字で今シーズンも期待に応える大活躍はできず。移籍の可能性は大きくないが、来シーズンは新選手との競争になるはず。
契約は2021年まで。
Dylan Vente 13試合出場1得点2アシスト
プレシーズンで好スタートを切ったがテクニカル・スタッフを納得させることができず、ほとんど出場機会の無い失望のシーズンに。スペースへの動きは評価されるが、ポストプレーでの力強さに欠け、トップチームの戦力としてはまだ不十分。ヨングで10番起用されたことも多く、20歳になって来シーズンも控え候補濃厚なら将来のためにレンタル修行が必要なはず。
契約は2022年まで。
Luis Sinisterra 5試合出場 0得点0アシスト
将来への補強として久々に欧州圏外から2milで獲得されたが、ヨングでも目立ったプレーは無く1年が経過。オファーがあれば即放出もあるが、無ければレンタルも。
契約は2021年まで。
Naoufal Bannis 0試合出場
Onder19のスピッツとして活躍し、シーズン終盤にヨルゲンセンの出場停止のタイミングで初のベンチ入り。スピードとテクニックと得点能力に優れ、将来への期待は大きい。まだ17歳という年齢を考えれば来シーズンもO19で継続が現実的。
契約は2021年まで。