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VAR制度教材: 介入できない誤審は避けられない

2019年7月27日に行われた練習試合 Yokohama Marinos - Manchester Cityの36分にVAR制度の構造上興味深いレアケースがあったので紹介。

 

Manchester Cityの選手がドリブルで抜け出してペナルティエリア内でGKと接触したかどうかというシーンでエリア外へ倒れ、主審はエリア外でのファールを取ってGKにイエローカードを提示。しかし映像で見ると明らかにエリア外での接触は無く、「接触したかどうかというシーン」はペナルティエリア内だったが、VARとコンタクトが取られたが介入は無くそのままの判定が保持された。

 

この場合VARが取れる選択肢は2つしかない。
・主審のファールの判定を支持(少なくとも罰することができるものと判断)し、接触はエリア内と助言(主審はそれを受け入れてPKに判定を修正する)。
・PKを与えなかった判定を支持。

 

つまり接触したかどうかというシーンは明らかにペナルティエリア内という「事実」を踏まえれば、後者を選んだVARの判断としては「主審のファールの判定を支持」することができなかった(罰することができるファールでは無いという判断した)ということになる。そのために『VARはファールでは100%無く必然的にイエローカードでも無いと思った』が、その部分への介入ができないためにFKとイエローカードの判定が保持された。

 

見過ごすべきで無いのは、VARの判断が正しかったかどうかを別にしても、VARがチェックを行って主審とコンタクトを取ったにも関わらず、より正確な判定(PK判定か、ファール&イエローカード判定取り消しでドロップボールで再開)のどちらにも至らない結果になったということ。ファールかどうか、イエローカードかどうか自体はビデオ判定の対象外であり、VARが判断するのはあくまで「PKかどうか」というルールなために、起きた事態と言える。

 

映像を見ているVARがチェックした上でファールでは無いと確信しているのにイエローカードが取り消されないのはおかしいという意見は当然あるだろう。VARプロトコルではVARによる介入の影響を最小限に留めるためにイエローカードかどうか自体はビデオ判定の対象とされておらず、「得点・PK・レッドカード・選手誤認」の4つにおいて介入を行う場合にのみ、オン・フィールド・レビュー後の判定修正の際にイエローカードが適切かどうかについても主審と話すことができるというルールになっている。今回のようなケースを考えると将来的には部分的にこの条件が緩和されることを期待したくもなるが、ルールが煩雑になり、逆に明確なイエローカード誤審が取り消される場合と取り消されない場合の不公平感が増す可能性も高く、時にあるレアケースとして容認されるしか無いだろう。