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ビデオ・アシスタント・レフェリー制度の現在地: 『重大な見逃し』の際のオン・フィールド・レビュー

アルゼンチン人主審 Nestor Pitanaとイタリア人VAR Massimiliano Irratiによって担当されたWKフィナーレは1-1の前半終盤にオン・フィールド・レビューによってクロアチアのIvan Perisicがペナルティエリア内でのハンドリングを取られてPK判定となったことが試合のターニングポイントに。

 

主審 Pitanaはこのシーンを見えておらず、フランス人選手のプッシングの判定をしているが、VAR Irratiがレビューを行い「ハンドリングと言えるシーンがあった。腕がボーに向けて動いている。自分で見たいか?」と説明。Pitanaは「私には全く見えなかったら自分で見て判定したい」と答え、判定はOFRに持ち込まれた。この大会でVAR制度は「VARが本当に明確な誤審と判断した時だけ介入する」というかなり高い基準で運用され、全体として十分成功といえる内容だったが、このシーンがハンドリングかどうかは、その疑いは十分持てるが、審判によって判断が分かれるグレーゾーンだったのは確か。実際にこのフィナーレでAVAR3を務めていたデニー・マッケリーは「私ならあのPKは与えていなかったと思う」と振り返っている。

 

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ただしVAR制度において「主審が見て判定していた場合」と「主審が見ていなかった場合」でVARの対応は上記のやり取りのように変わる。前者の場合はVARは主審の自由裁量を尊重し、グレーゾーンを明らかに脱した明確な誤審と確信しない限り介入しないが、後者の場合はグレーゾーンであっても疑わしい「ペナルティを科せる」場合なら、主審にとって「重大な見逃し」を避けるためにOFRの実施を勧めることができる。

 

当初からVAR制度の大きな目的として「重大なシーンでの明確な誤審を避ける」と同じく、「重大なシーンでピッチ上の審判団にとって何が起きたか認識できない状況を避ける」というものがあった。判定基準にはグレーゾーンがあり、それは主審の裁量によって基準が設けられる。重大なシーンで主審が見逃した出来事があり、それが主審にとってペナルティを科すに相応しい違反だったのなら、見逃しがあったことで不公平が生じることになる。これを避けるのが重大な見逃しの際のVARによるOFR実施の勧めであり、『主審の権限は最大限保障され、尊重されなければならない』という競技規則の原則がその根拠となっている。

 

ただこの場合でもやはり常に問題になるのはこうしたOFR実施が「最小限の介入」というVAR制度のフィロソフィに適ったやり方かどうかだ。主審が見逃し、グレーゾーンの中でVARがある程度「ペナルティを科せる」と判断するシーンがトップレベルの試合でどの程度の頻度なのかは不明だが、判断するVARの権限が大きくなりすぎる危惧は残る。VAR制度でも主審の権限は最大限尊重されなければならないが、それによって同時にVARの判断が状況を左右する比率も高くなるという難しい問題を感じさせたフィナーレだった。