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IFABのVARテスト分析レポート(2): ルールの曖昧さ問題

IFABのVARテスト分析レポート(1): 内容

いくつか不明点があったのでとりあえず大まかな内容だけ書き出しておいたままにしてましたが、VARハンドブックの最新版といろいろ聞き回って多少理解ができてきたので今回は内容についてややテクニカルな話。

 

・「チェック」と「レビュー」の差

当初からMLS方面の記事で「チェック」という用語が出ていて、具体的な意味が分からず、今回のIFABのレポートでも「チェックに20秒」や「チェックではリプレイを使用できない」などと書かれていたので意味が分かりませんでしたが・・・ その後 Collinas Erbenからの情報提供で結局チェックは「簡易的な事前レビュー」程度の内容と判明。「実際リプレイを用いなければチェックは行えず、オペレーターからもこのガイドラインについて指摘がある」と教えて貰ったので、結局VARのルールの書き方に問題があるという結論に。

 

よく見かける主審が片方の手を耳に当て、もう片方を伸ばして待つジェスチャーも「レビュー」ではなく「チェック」の際のジェスチャーで、「レビュー・プロセスの最初に主審はTVスクリーンを両手で示してレビューの実施を明示しなければならない」と書いてありますが、特に後者がほとんど守られていませんので、外から見ると「チェックとレビューの差が全く分からない」ということになるでしょう。別にこういうことを知らなければ分からなくても大した問題は無い、と言えなくも無いですが、実際にどこでチェックとレビューの差を明確にしてデータとして集積されているのか、試合を見ていて大いに疑問ではあります。

 

「全ての対象シーンでVARはチェックを行い、『明確な誤審』の可能性を疑った時に主審にレビューを進言する」、または「主審はVARに常にチェック、レビューを要請できる」というルールになっているようですが、個人的には「チェックによってVARが明確な誤審の疑いを持った時だけレビューを行える」としておいた方がまだ自然な気がしますし、少なくとも「チェック」と「レビュー」の具体的な行為の違いが文章で明文化できないと運用ルールとして不十分でしょう。VAR制度の根幹的な部分でなぜこんなに曖昧なのかが理解に苦しみます。

 

・オン・フィールド・レビューの条件

事実に基づくか主観が入るかの説明は豊富になってますが、「レビューの結果を受けて主審はVARの助言を受け入れるか自らオン・フィールド・レビューを行うかを選択する」とだけ書かれているので、これだとVARが明確な誤審と確信を持たなくても「疑わしいシーン」で主審は常にOFRを行える、という話になります。

 

実際そうはなって無いと思いますし、いろいろあったドイツ方面では「VARが介入できるのは明確な誤審のみ」と再三強調されているので、やはりルールの書き方と実際の状況にかなり違いがあります。ルール的にも「VARが明確な誤審と判断した場合のみ主審はOFRを行える」とした方が混乱を招かないと思いますが、レビューの条件と同様にそれでは主審の権限が弱すぎるという考え方でしょうか・・・

 

 ・‘clear and obvious errors’の説明

なぜ'obvious'が増えたかの説明をIFABは誰もしてくれませんが、‘clear and obvious errors’が何なのか、少なくともなぜ‘clear and obvious'という条件なのか、そろそろ運用ルールでそれこそ‘clear and obvious'にしておいた方が良いのではないかと・・・

 

・VAR、リプレイ・オペレーターの教育と訓練、ライセンス制度

テストの具合で「やはり主審とVARだけでなくリプレイ・オペレーター(RO)の能力も重要」ということでその部分の指摘にだいぶ力が入ってますが、実際にどういう訓練をどの程度求めるかの話は具体的になっていません。テストの結果を受けてそのあたりのガイドラインが今後制作されるとは思います。

 

VARとVARテクノロジー全体のライセンス制度は設けられそうですが、審判員ではないROの試合の流れに与える影響を考えると、この点で何らかの資格制度が導入されるかは興味深いところでしょう。