Mijn Feyenoord

Feyenoordを中心にNederlands voetbalを追いかける

Bedankt John! Held von Rotterdam!

最終節を前に見事欧州戦枠を確定させたフェイエノールト。クラブは再び欧州への切符を手にするという今シーズン最大の目的を果たしたことで喜びと安堵感に包まれているが、一方で悲しい別れもある。2週間前の腹痛と発熱により、その後ウィルス性の神経炎に冒されたジョン・グイデッティ。今シーズンのフェイエノールトを引っ張ってきた20歳のスピッツはシーズン最後の数試合をプレーできなくなってしまった。レンタル延長の希望は出しているが、全てマンチェスター・シティ次第であり、このままフェイエノールトを去る事が濃厚なのは誰もが分かっている。

 

当初は左足の感覚をほとんど失っていたが、歩けるまで快復したことでホーム最終戦ヘラクレス戦はスタンド観戦。チームはグイデッティのために情熱的なプレーを見せ、特に親友であるジェルソン・カブラルはここ数ヶ月の不調が嘘のようなプレーで1ゴール2アシストの活躍。自らのゴールの後にはこれまでグイデッティが何度も見せてきたゴールパフォーマンス 'plankt'をスタンドの親友へ向けて披露した。それを見てグイデッティは涙を堪えられなかったとコメントしている。

 

「あれはとてもエモーショナルな瞬間だった。ジェルソンが僕のことを励まそうとしているのがよく分かった。僕と彼は兄弟のような関係だからね。試合後も何人もの選手から『この勝利はおまえに捧げる』と言ってもらった。本当にファンタスティックなこと」

 

昨夏のプレシーズン、ルク・カスタイニョスを失いスピッツの補強が必須だったフェイエノールトエクセルシオールからギオン・フェルナンデスを獲得したものの、得点力のある絶対的スピッツは未だ不在だった。そこでヨング・オランイェとの試合で大活躍して2得点を奪ったグイデッティの映像を見たロナルド・クーマンが獲得を希望。グイデッティにとっては早い時期にトゥエンテへの移籍が決まりかけるなど落ち着かない夏だったが、結局マンチェスター・シティとの契約延長を決めていたこともあり、かねてから好感を抱いていたフェイエノールトへのレンタルがすんなり決まったことは、フェイエノールトにとってもグイデッティにとっても大きな幸運だった。

 

当初はなかなかコンディションが整わずに出遅れていた感があったが、本来カウンタースピッツギオン・フェルナンデスがポストプレー面で苦戦していたためにすんなりスタメンにつくと次第にポテンシャルの高さを披露。第10節のアウエーでのデ・クラシケルは風邪で欠場したが、第15節デ・カイプでのPSV戦では正確なポストプレーで両ウィングのゴールに貢献。特に第14節でのRKC戦では先制されたチームのために見事な同点ゴールを決めた後、チームメイトに対して手首を指さし、大きな手振りで『あと15分!逆転するぞ!』と鼓舞する姿がオランダ国内に大きな印象を与えた。

 

この時点ではまだプレー以外での刺激的でややエキセントリックにも映る振る舞いが注目されていたグイデッティ。しかしわずか19歳の若者が「リーダー不在」の名門を最前線で引っ張っているのは信じられない光景であり、その強烈なキャラクターと影響力、ファイティングスピリットはほとんどの人々に好感を持たれていたのが事実だ。

 

フェイエノールトへの愛を躊躇することなく見せていたグイデッティはすでにレヒューンのアイドルとなっていたが、そこからヒーローとしての価値を絶対的なものにしたのは第17節トゥエンテ戦、そしてウィンターストップを挟み第19節アヤックス戦、第21節フィテッセ戦でのハットトリックだろう。デ・カイプでの3試合連続ハットトリックという偉業を成し遂げ、それ以上にデ・クラシケルでの勝利に大きく貢献したことでデ・カイプをかつてのような興奮の坩堝へと変容させた。

 

ヒーローを超えて一気に伝説的存在にまでなったことで、これ以降チームにとってグイデッティは絶対に欠かせない存在となったグイデッティ。しかしあまりにも強烈な存在だったために、逆に彼を失ったチームがピッチ上で自信を失ってしまうという悪影響も確実にあっただろう。その最たる例が第22節RKC戦だった。相手の堅い守備に苦しんでいたフェイエノールトは残り15分を切ってようやくグイデッティのPKで先制したが、直後にプレッシャーから解放されたグイデッティがシャツを脱いでしまいこの試合2枚目のイエローカードで退場に。信じられない光景だったが、わずか19歳の若者がデ・カイプの期待と重圧を一身に受けて耐え続けて来たことを考えればあのような行為も理解はできるものだった。だが残り15分でグイデッティを失ったチームはゴール前に閉じこもるだけで全くフットボールができなくなり、一方的に攻め続けられた結果同点ゴールを許し、終わってみれば1pt取れてまだラッキーだったという試合になってしまった。

 

だがこれもチームの成長過程として起こり得る状況。フェイエノールトは3月に入ると第24節以降安定感を増し、悪い内容でもしっかり勝てるようになると、セク・シセも復帰後の活躍もあってグイデッティの存在感はいい意味で減っていった。その結果がグイデッティが病魔に冒され、欠場を余儀なくされた状況でのADO戦、AZ戦、ヘラクレス戦の連勝だろう。特に神経炎が明らかになったAZ戦以降は明らかに「グイデッティのために」とチームの士気が高まっていた。

 

ヘラクレス戦後、ホーム最終戦を終えてスタンドに挨拶するセレクションの中心にいたのはもちろんグイデッティだった。キャプテン フラールに担がれ、レヒューンに1年間のサポートへの感謝と別れの挨拶をした後の彼の目は明らかに潤んでいた。

「みんな僕のことを心配しているのを示してくれた。みんなのことが死ぬほど大好きだ。フェイエノールトはいつまでも僕の心にあり続ける。クラブ、選手、ファンに心を打たれた。この1年は僕の人生最良の1年だった」

 

フェイエノールトにとってはディルク・カイト以来の長らく待望だった20得点スピッツであり、クラブカルチャーに合うファイティングスピリットを備えたリーダーでもあったグイデッティ。レヒューンの愛情を一身に受け、彼自身もヘラクレス戦を前にTwitter上で"I am Feyenoord till I die"とつぶやくなどフェイエノールトを深く愛してくれた。両者の関係を「幸せな結婚だった」とクーマンは振りかえる。

 

「ジョンはクラブに多くに愛を捧げてくれたし、フェイエノールトからも多くの愛を返して貰った。両者にとってとても幸せな結婚だったと言えるだろう。だから最後の数試合を彼がピッチの外で見守られなければならない辛さは想像できるよ。もちろん彼には来シーズンもここに残ってプレーして貰いたい。しかし全てマンチェスター・シティ次第であり、フェイエノールトにできることはほとんど無いんだ」

 

現在グイデッティはフェイエノールトのドクター陣の懸命の治療を受け、リハビリに励んでおり、EK出場の夢も「かなりの速さで良くなっているから可能性は大きいと思う」とまだ諦めてはいない。

「一時は左足の感覚がほとんど無かったけれど、いまは歩けるまでになった。ドクターにも快復の早さに驚かれているよ。最終節はチームと一緒に行きたいけど、この数日の快復具合次第。もし駄目だったらデ・カイプでバスを待つ。みんなが戻って来たら一緒に踊るよ」

 

ロッテルダムとレヒューンのアイドルであり、ヒーローであり、永遠に語り継がれる伝説としてクラブをフェイエノールトを去るグイデッティ。ファンは一日も早い快復を、そしてまたどこかのピッチであの力強いプレーが見れることを心から願っている。この夢のような1年間に心からの感謝を・・・

 

Bedankt John! Held von Rotterdam! You'll never walk alone!!